飲食店の生肉提供ルール:肉の種類で規制が違う理由を解説【牛肉】

本ブログでは、飲食店で生肉メニューを提供する際に、肉の種類や部位ごとにどのような規制が設けられているのか、また、なぜ近年になって規制が大きく厳格化されてきたのかについて、背景や理由を含めて分かりやすく解説していきます。

今回は文字数の都合上、内容を3つの記事に分け、
牛肉・鶏肉・豚肉
それぞれを1テーマずつ取り上げて解説します。

本記事ではその中でも「牛肉」に焦点を当てて解説します。他の肉種については、別記事で詳しく解説していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。
※飲食店の生肉提供ルール:肉の種類で規制が違う理由を解説

目次

牛肉の部位ごとの規制の違い

飲食店で牛肉を生で提供する場合、提供する部位によって適用される規制の厳しさが大きく異なります。
例えば、牛レバー(肝臓)は、生で提供すること自体が食品衛生法に基づき禁止されており、提供した時点で違法となります。
※正確には牛レバーの生食提供禁止は、食品衛生法11条1項に基づき、厚生労働大臣が定める「食品、添加物等の規格基準(告示)」により明確に規定されています。施行規則の特定条文に直接「牛レバーは禁止」と書かれているわけではありません。

一方で、ユッケやタルタルステーキなどに使用される赤身肉については、一定の条件を満たすことで、例外的に提供が認められています。
同じ牛肉でありながら、なぜこれほどまでに規制の重さに違いがあるのでしょうか。

次の章では、牛肉が持つリスクの構造に注目し、部位ごとに規制が分かれている理由について詳しく解説していきます。

なぜ違うのか

少し前の出来事になりますが、2011年4月に焼肉店で提供されたユッケによる集団食中毒事件が発生しました。
この事件をきっかけに、行政は牛肉の生食に関する規制を大きく強化しています。

その後、ユッケを提供する飲食店は急激に減少し、「牛の生肉提供そのものが禁止されたのではないか」という印象を持たれることもありました。
しかし実際には、牛の生肉が一律に禁止されたわけではありません。

国は、肉の部位ごとにリスクの性質を分けて評価し、

  • 牛レバーについては生提供を禁止
  • ユッケなどの牛赤身については、厳格な基準を設けたうえで提供を認める
    という対応を取りました。

では、国はどのような基準でこの判断を行ったのでしょうか。
その判断軸となったのが、科学的・構造的に再発防止が可能かどうかという点です。

牛レバーの場合

  • 内部まで細菌汚染が及ぶ可能性がある
  • 表面処理ではリスクを除去できない
  • 実効性のある再発防止策が立てられない

牛赤身の場合

  • 危険の中心は表面汚染
  • トリミングや専用加工により除去が可能
  • 理論上、リスク低減が可能

→ その結果、「生食用食肉の規格基準」が新設され、条件付きで提供が認められました。

つまり牛レバーは、生物学的に見ても腸管出血性大腸菌(O157、O111など)が内部に入り込む可能性を否定できない臓器であり、加熱以外に安全性を確保する方法がありません。
一方、牛赤身は筋繊維の内部が基本的に無菌であるため、外部からの汚染を適切に管理できれば、理論上は安全性を確保できる、という考え方が採られています。

飲食店での生肉の取り扱いをする上での注意点

先ほど、牛赤身であれば条件付きで生提供が可能と説明しましたが、飲食店が実際に提供するためには、主に2つの方法があります。

① 保健所から「生食用食肉取扱施設」として認定を受け、認定された取扱者を配置する方法
② 生食用食肉取扱施設として認定を受けた食品加工工場から、加工済みの肉を購入する方法

この2つの方法のうち、実務的な観点で見ると、それぞれに大きなハードルがあります。

①の場合、認定自体の難易度が極端に高いわけではありませんが、施設基準を維持するための設備投資や管理コストが継続的に発生します。

②の場合は、食品加工工場からの仕入れとなるため原価が高くなり、さらに冷凍での納品が基本となることから、食味の面でも制約が生じます。

その結果、現在の実務においては、ユッケなどの生肉メニューは、リスクとコストの両面から見て採算が合わず、一部の店舗を除いて提供されにくいメニューとなっているのが実情です。

牛の生肉での規制についてよくある誤解

当事務所では、飲食店向けのHACCP導入支援や飲食店専門の補助金サポートを行っており、日頃から多くの飲食店にヒアリングを行っています。
その中で感じるのが、牛の生肉提供に関する規制について、実務上よくある誤解が少なくないという点です。

この章では、特に誤解されやすいポイントについて、いくつか整理して解説します。

「生肉提供で重い処分になるのは、重大な食中毒が起きた場合だけ?」
まず多く聞かれるのが、「生肉を提供して行政から重い処分を受けるのは、重大な食中毒事故が発生した場合だけではないか」という認識です。

しかし実際には、食中毒が発生したかどうかや、客の同意があったかどうかは関係ありません
規制に反する形で生肉を提供した時点で、行政処分の対象となります。

逆に言えば、適切な認可を受け、衛生管理基準を満たしたうえで提供していた場合、万が一食中毒が発生したとしても、行政から重い処分を受けるケースは多くありません。

炙りユッケ・たたきは生肉に該当するのか?
こちらも非常によくある質問ですが、炙りユッケやたたき、ローストビーフなどであっても、内部まで十分に加熱されていない場合は、ユッケと同様に「生肉の提供」として扱われます。

表面を炙っているかどうかではなく、中心部が生であるかどうかが判断基準になります。

他の牛の部位はどうなのか?
牛レバー以外の部位、たとえばホルモン系や牛タンについては、法律上「明確に禁止されている」わけではありません。

ただし、禁止されていないからといって、生で提供して問題がないわけではありません。
これらの部位は、そもそも生食を前提として扱われていない部位であり、行政としても生食を推奨していません。

仮にこれらを「裏メニュー」などの形で提供した場合、明確な基準が存在しないため、行政の裁量によって判断されやすく、どのような対応が取られるかを事前に予測することは困難です。
軽い指導で済むケースばかりとは限らない点には注意が必要でしょう。

まとめ

本ブログでは、牛肉の部位ごとに、生肉提供に関する規制の違いについて解説してきました。

現在、牛肉の生提供に関する規制は非常に厳しく、飲食店側から見ると、行政が定めるルールに強い不公平感を覚える方も少なくないと思います。

しかし、行政の視点に立って考えてみると、もし2011年のユッケ集団食中毒事件以降も、生肉提供に対する規制が強化されなかった場合、どうなっていたでしょうか。

当事務所の推測では、2011年の事件と同規模、あるいはそれ以上の集団食中毒事故が、国内で繰り返し発生していた可能性は高いと考えています。

事件から10年以上が経過し、現在では以前とは比較にならないほど多くの輸入食材が日本国内に流通しています。
さらに近年は、インフレや円安の影響により、価格の安い輸入食品を求めて、調達先も多様化しています。

そうした高いリスクがある状況の中で、万が一、仕入れた食材に菌が付着しており、それを調理・提供した結果として食中毒が発生した場合、最初に責任を問われるのは、仕入れ先ではなく、提供した飲食店です。

明確なルールが存在しない状態で、自らの無実を証明することは、SNSが発達した現在ではほぼ不可能に近く、事実関係の説明に入る前に、精神的に疲弊してしまうケースも少なくありません。

一方で、食品衛生に関する明確なルールが存在すれば、それを根拠として不要な追及を防ぐことができ、行政という「味方」を得ることも可能になります。

少し長くなりましたが、次回は鶏肉をテーマにした記事をご紹介していく予定です。


Albaビザ申請サポート事務所
三重県四日市市天カ須賀5丁目1番17-7号
TEL : 080-6865-3422
営業時間: 9:00~18:00
定休日:日曜日
メールアドレス:alba.support.org@icloud.com
インボイス登録番号:T3810964268629

当事務所の公式SNSアカウントです。
お問い合わせ、ご相談は24時間受付けています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次