昨今では、一昔前と比べものにならないほど、「外国人」に関する話題がニュースなどで頻繁に取り上げられるようになりました。その背景の一つとして、日本国内に在留する外国人の数が年々増加していることが挙げられます。
本記事では、近年ニュース等で目にする機会が増えている「育成就労制度」について、実務の視点から分かりやすく解説していきます。
なお、内容は現時点で公表されている情報の範囲に基づいて説明します。
「育成就労制度」とは?
まず結論からお伝えすると、育成就労制度とは、現在の技能実習制度に代わる新たな在留資格の一つです。
日本で外国人が働くためには、原則として「就労ビザ(在留資格)」が必要となります。
就労ビザは、業種や日本での在留目的の違いによって、いくつかの種類に分かれています
(詳しくは当事務所ブログ「就労ビザって何?」をご参照ください)。
その就労ビザの一つとして新たに位置づけられるのが、育成就労制度です。
なお、現在の「技能実習」は、厳密には就労資格ではありません。
在留資格としての位置づけは、あくまで「技能の習得を目的とした実習制度」となっています。
この点については入管実務を専門とする方であれば理解しやすい部分ですが、本記事では詳細な法的整理は割愛します。
ただし、これだけでは両制度の違いが分かりにくいため、当事務所の見解も交えつつ、事業者の視点で重要となるポイントに絞って解説していきます。
育成就労制度と技能実習制度の共通点
まずは、育成就労制度と技能実習制度の主な共通点です。
- 技能実習と同様に、「監理型」と「企業単独型」の2種類が存在する
(育成就労制度においても、実務上はほとんどの企業が監理型となる見込みです) - 技能実習と同様に、監理団体が存在する
※育成就労制度では「監理支援機関」へ名称が変更されます
これら2点が、技能実習制度との大きな共通点といえます。
一見すると、制度自体に大きな変化はないように見えますが、監理支援機関側の視点で見ると、法令遵守に関する要求はこれまで以上に厳しくなると考えられます。
詳細は今後公表される予定ですが、当事務所としては、書類作成や監理業務はより煩雑化していくと予想しています。
育成就労制度と技能実習制度の違い(事業者目線)
次に、事業者の立場から見て特に重要となる違いは、以下の3点です。
① 在留期間が短縮される
② 転籍が可能となる
③ 指定区域における受入れ人数枠の優遇措置がある
それぞれについて、もう少し詳しく見ていきます。
① 育成就労では在留期間が最長3年に短縮される
現行の技能実習制度では、技能実習1号〜3号を通じて最長5年間の在留が可能でした。
一方、育成就労制度では、最長在留期間は3年間となります。
また、過去に日本で技能実習生として就労した経験がある場合、その期間は育成就労を行った期間とみなされ、原則として再度育成就労で働くことは認められません。
ただし、技能実習で従事した職種・作業に対応する育成就労の受入れ分野が存在しない場合など、一定の例外が設けられる予定とされています。
これらの詳細については、今後主務省令等で定められる予定です。
② 転籍が可能となる
育成就労制度では、パワハラや暴力などの人権侵害を受けた場合といった「やむを得ない事情」がある場合に転籍が認められます。
さらに、一定の要件を満たせば、本人の意思による転籍も可能とされています。
本人意思による転籍の主な要件は以下のとおりです。
- 転籍先で従事する業務が、転籍前と同一の業務区分であること
- 転籍元での就労期間が、産業分野ごとに定められた
「1年以上2年以下」の所定期間を超えていること - 育成就労外国人の技能および日本語能力が一定水準以上であること
- 転籍先の育成就労実施者が、適切と認められる要件を満たしていること
具体的な基準については今後主務省令等で明確化される予定ですが、現時点の情報から判断すると、一定の要件を満たせば、本人の意思による転籍は比較的行いやすくなると考えられます。
本人意思による転籍に関する追加要件
本人意思による転籍については、技能実習制度にはなかった新たな要件も設けられています。
- 民間職業紹介事業者を関与させていないこと
- 転籍者の割合に上限が設けられていること
- 転籍元が負担した初期費用について、転籍先が一部負担する仕組みが導入されること
これらの点は、受入企業側にとって実務上の影響が大きいポイントとなるため、今後の詳細発表を注視する必要があります。

③ 指定区域では受入れ人数枠の優遇措置が設けられる
指定区域とされる一部の市町村では、育成就労外国人の受入れ人数枠について優遇措置が設けられます。
この制度も育成就労制度において新たに導入されるものです。
背景としては、近年、在留外国人が大都市圏へ集中する傾向が強まっていることが挙げられます。
これにより生じている地方との賃金格差や人材偏在の影響を抑制することが、主な目的であると考えられます。
指定区域(地方)と大都市圏の考え方
法務大臣および厚生労働大臣が定める区域は、大きく次の2つに区分されます。
- 指定区域(地方)
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県以外の道県
ならびに、上記8都府県のうち「過疎地域」とされる地域 - 大都市圏等
上記8都府県のうち、過疎地域を除いた地域
8都府県のうち、過疎地域として指定されている市町村については「指定区域(地方)」に分類され、それ以外の地域は「指定区域外(大都市圏等)」として扱われます。

指定区域における配慮措置の概要
これら法務大臣・厚生労働大臣が定める指定区域では、受入れ人数や転籍者の割合について配慮措置が設けられます。
なお、
- 受入れ機関
- 監理支援機関
が「優良」であるかどうかの具体的な認定基準については、今後、主務省令等において詳細が定められる予定です。

受入れ人数枠は、以下の区分により拡大されます。
- 一般の育成就労実施者
→ 基本人数枠 - 優良な育成就労実施者
→ 基本人数枠の2倍 - 優良な監理支援機関の監理支援を受け、かつ指定区域(地方)に所在する優良な育成就労実施者
→ 基本人数枠の3倍
このように、指定区域(地方)に所在する事業者であること、かつ一定の要件を満たすことにより、受入れ可能人数が大きく拡大される点が、育成就労制度の大きな特徴です。
育成就労外国人の受入れ人数枠について
育成就労外国人の受入れ人数枠については、本記事では監理型の場合のみを前提に説明します。
- 育成就労実施者の常勤職員数に応じて、受入れ可能な外国人の上限人数が定められる
- 受入れ人数枠は、育成就労開始から1年目〜3年目までの育成就労外国人の合計人数に対する上限となる
(技能実習制度にあった1号・2号・3号の区分は廃止) - やむを得ない事情により転籍した者や、3年を超えて育成就労期間が延長されている者は、受入れ人数枠の算定対象外とされる
※なお、監理支援機関が優良であること自体は、受入れ人数枠の要件とはなりません。

まとめ(事業者目線のポイント)
育成就労制度における指定区域の優遇措置は、
- 地方の人材確保を後押しする制度設計
- 受入れ人数枠の大幅な拡大が可能
- 一方で、優良認定や管理体制の整備がより重要
といった特徴があります。
特に地方で外国人材の受入れを検討している事業者にとっては、制度を正しく理解することで、採用戦略に大きな差が生じる可能性があります。
今回の記事の整理と今後の注意点
育成就労制度は、令和6年6月21日の公布日から起算して3年以内に施行される予定とされていますが、現時点では具体的な施行日は未定となっています。
現在公表されている情報を見る限り、制度の詳細については、まだ具体性に欠ける部分が残っているものの、制度全体の基本的な枠組みについては、おおよその方向性が示されてきたといえるでしょう。
育成就労制度や特定技能制度など、外国人の在留資格に関する法改正は、近年、非常に頻繁に行われています。
また、外国人労働者や移民をめぐる話題は、テレビやインターネットでも度々取り上げられており、日本社会全体としても非常にセンシティブなテーマになっていると感じる場面が増えてきました。
そのような中で、外国人の受入れについては、知らないうちに法令違反となってしまうリスクも決して低くありません。
日頃から少しずつ情報収集を行い、不明点や判断が難しい場面では、早めに専門家へ相談することが、結果として自社の信用や評判を守ることにつながります。
今後も育成就労制度について新たな情報が公表され次第、本ブログにて随時、最新情報を分かりやすく解説していく予定です。
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