“新しい働き方”と日本の在留資格制度のズレ
ロシア出身YouTuber「あしや」氏が、日本での在留継続が困難になったというニュースが話題になっています。
報道によれば、経営管理ビザが不許可となり、その後は「興行ビザ」での可能性も検討されているとのことです。
このニュースを見て感じたのは、単なる一人のYouTuberの問題ではなく、日本の在留資格制度そのものが、現代の働き方に追いつけなくなり始めているのではないか、という点です。
「価値がない」のではなく、「制度に当てはまらない」
まず誤解してはいけないのは、YouTuberやインフルエンサーという仕事自体が、社会的価値のないものだという話ではありません。
現在では、
- 広告収入
- 企業案件
- 商品PR
- コミュニティ運営
- EC販売
- サブスク収益
など、多様な収益構造を持つクリエイターが増えています。
中には、中小企業を超える売上を個人で生み出しているケースも珍しくありません。
実際、「あしや」氏のような日本文化系コンテンツは、
- 外国人目線からの日本文化紹介
- 日本社会への理解促進
- 多文化交流
- 日本企業の商品PR
といった側面も持っています。
つまり、「日本に価値を生んでいない」というよりも、現在の在留資格制度のどこにも綺麗に当てはまらないという点が問題なのです。
経営管理ビザが不許可となった背景
“事業の継続性”という壁
今回の件について、これはあくまでも私個人の推測になりますが、経営管理ビザが不許可となった最大のポイントは、「事業の継続性」だったのではないかと感じています。
報道によれば、「あしや」氏はSNSマーケティング関連の会社を設立し、経営管理ビザを申請したとされています。
もちろん詳細な申請内容までは公開されていないため断定はできません。
ただ、経営管理ビザでは一般的に、
- 資本金
- 事務所実態
- 事業計画
- 収支見込み
- 経営の安定性
などが審査対象となります。
そのため、資本金要件や形式面については、ある程度クリアしていた可能性も十分考えられます。
では、なぜ不許可となったのか。
そこで一つ考えられるのが、「この事業は、本当に継続的・安定的に運営できるのか」という点です。
SNSマーケティングという“新しい職種”
SNSマーケティングやインフルエンサー関連事業は、現在では大きな市場を持っています。
しかし一方で、在留資格実務という観点から見ると、比較的新しい業種でもあります。
例えば、
- フォロワー数の変動
- アルゴリズム変更
- 広告単価の変化
- 流行の移り変わり
- プラットフォーム依存
など、事業の不確実性も大きい分野です。
さらに、YouTubeやSNS収益型ビジネスは、従来型企業と比較すると、「どのように安定性を評価するのか」という点自体が、まだ制度的に整理されきっていない部分があります。
つまり、審査官側としても、
- どこまで継続性を認めるべきか
- どの程度の収益実態を評価するべきか
- 将来的な安定性をどう判断するか
について、非常に判断が難しかった可能性があります。
“価値がない”のではなく、“前例が少ない”
ここで重要なのは、「SNS事業だから価値がない」という話ではない、という点です。
むしろ現在では、SNS関連事業は巨大市場になっています。
しかし、在留資格制度はどうしても、
- 前例
- 運用実績
- 既存制度との整合性
を重視する傾向があります。
そのため、
- 前例が少ない
- 判断基準が曖昧
- 将来予測が難しい
という状況では、審査側も慎重になりやすい。
結果として、「許可を出す積極的理由を見出しにくい」という方向に傾いた可能性は十分考えられます。
もちろん、実際の不許可理由は公開されていないため、これはあくまでも一つの推測に過ぎません。
ただ、今回のケースは、「新しい働き方を、既存制度がどう評価するのか」という、これからの在留資格実務における大きな課題を象徴しているように感じます。
日本の在留資格制度は“従来型の職業”を前提としている
現在の日本の在留資格制度は、基本的に、
- 会社員
- 通訳
- エンジニア
- 調理師
- 研究者
- 芸能人
など、比較的「所属先」と「職種」が明確な時代を前提に作られています。
しかし現在はどうでしょうか。
YouTuber一つ取っても、
- 映像制作
- 広告業
- SNSマーケティング
- タレント活動
- EC販売
- コミュニティ運営
など、複数の職種が混在しています。
しかも近年は生成AIの進化により、
- 動画編集
- 翻訳
- デザイン
- ライティング
- 音声制作
- マーケティング
まで、一人で行える時代になりつつあります。
つまり今後は、「職種の境界が曖昧なまま、巨大な収益を生み出す個人」が増えていく可能性があります。
組織ではなく、“個人”が巨大化する時代へ
これまでの社会では、巨大な売上を生み出すには、会社組織が必要でした。
しかし今後は、
- AI活用
- SNS
- グローバル配信
- オンライン決済
- デジタルマーケティング
などを活用し、一人で複数の役割を担うことで、中小企業並み、あるいはそれ以上の売上を作る個人が増えていく可能性があります。
つまり、「所属先が明確な職業」という従来型の考え方そのものが、徐々に変化していく可能性が高いと思われます。
今後、日本はどう動くのか
海外ではすでに、
- デジタルノマドビザ
- クリエイタービザ
- フリーランス向け在留制度
など、多様な働き方に対応した制度を導入する国も増えています。
一方、日本は比較的慎重な制度運用を行う国です。
そのため、すぐに大きく制度変更が行われる可能性は高くないかもしれません。
ただ、今後、
- AI時代の働き方
- 国境を跨ぐオンラインビジネス
- 個人ブランド型事業
- クリエイター経済
がさらに拡大していけば、現在の制度とのズレはより大きくなっていくでしょう。
今回の「あしや」氏の問題は、その“先行事例”として見るべきなのかもしれません。
これからの在留資格制度に求められるもの
今後の課題は、「その人が既存の職種に当てはまるか」だけではなく、「日本社会にどのような価値を生み出しているのか」という視点も含めて、制度をどう整理していくかにあると思います。
そして、これは単なるYouTuberだけのの問題ではありません。
生成AIの普及によって、今後はさらに多様で複雑な働き方が生まれていくでしょう。
現在の制度と、現実社会の働き方。
そのズレは、これからますます大きなテーマになっていくのかもしれません。
【なべ行政書士事務所】
三重県四日市市天カ須賀5丁目1番17-7号
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