外国にいる高齢の親を日本に呼べる?「老親扶養」と告示外特定活動について

「母国にいる高齢の親を、日本に呼んで一緒に暮らしたい」

日本で長く生活している外国人の方から、このような相談を受けることがあります。

親がまだ元気なうちは、それほど問題にならないかもしれません。

しかし、年齢を重ねて一人で生活することが難しくなったり、病気を抱えるようになったりすると、

「このまま母国で一人暮らしを続けさせて大丈夫なのだろうか」

「日本にいる自分が面倒を見ることはできないのだろうか」

と考えるのは自然なことだと思います。

しかし、日本の在留資格制度には、外国人が高齢の親を扶養することを目的とした一般的な在留資格はありません。

では、高齢の親を日本に呼んで一緒に生活することは、絶対にできないのでしょうか。

ここで問題になるのが、一般に**「老親扶養」と呼ばれているケースと、「告示外特定活動」**です。

目次

「老親扶養」という在留資格があるわけではない

まず最初に整理しておきたいのが、「老親扶養」という名前の在留資格が存在するわけではないということです。

日本には「家族滞在」という在留資格がありますが、その対象となる家族は、原則として扶養を受ける配偶者または子です。親は含まれていません。

また、一定の要件を満たす高度専門職外国人については、その親を日本へ呼び寄せる制度が設けられています。

これは「特定活動告示34号」として明確に制度化されているもので、7歳未満の子の養育や、妊娠中の本人または配偶者への支援など、一定の目的・要件を満たす場合に認められるものです。

しかし、ここで取り上げる「老親扶養」は、この高度専門職の親に関する制度とは別の話です。

そもそも「特定活動」とは?

在留資格「特定活動」は、入管法上、

「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」

とされています。出入国在留管理庁も同様に案内しています。

「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などと比べると、少し分かりにくい在留資格かもしれません。

特定活動には非常に多くの種類があります。

例えば、

  • ワーキング・ホリデー
  • デジタルノマド
  • 外国人看護師・介護福祉士候補者等(EPA)
  • 本邦大学等を卒業した留学生の就職に関する「特定活動46号」
  • 医療滞在やその同伴者

なども「特定活動」に含まれます。出入国在留管理庁も、ワーキング・ホリデー、EPA看護師・介護福祉士候補者等を特定活動の例として挙げています。デジタルノマドについては特定活動告示53号として制度化されています。

このように、特定活動の中でも、法務大臣があらかじめ一定の活動を定めているものがあります。

それが**「特定活動告示」**です。

現在の特定活動告示には、さまざまな活動が列挙されています。

しかし、特定活動はその性質上、告示に列挙された活動だけに限られるものではありません。

個々の外国人の事情を踏まえ、告示には定められていない活動について「特定活動」が認められる場合があります。

これが一般に、

「告示外特定活動」

と呼ばれているものです。出入国在留管理庁の資料でも、告示に定められていない特定活動を「告示外」として区別しています。

高齢の親を日本で扶養する、いわゆる「老親扶養」についても、この告示外特定活動として問題になることがあります。

「70歳以上なら認められる」という制度ではない

老親扶養についてインターネットで調べると、

「70歳以上」

という数字を目にすることがあります。

しかし、少なくとも公開されている法令や特定活動告示に、「親が70歳以上であれば老親扶養として認める」という一般的な要件が定められているわけではありません。

そのため、

「親が70歳を超えたから申請できる」

「病気があるから認められる」

と単純に考えることはできません。

老親扶養は、一定の要件を満たせば当然に認められる制度ではなく、個々の事情が非常に重要になるケースだと考える必要があります。

実際の許可・不許可事例から見えてくること

今回、老親扶養について調べていく中で、過去に公開されている許可事例だけでなく、不許可となった事例についても確認しました。

そこで興味深かったのが、「高齢である」「病気がある」という事情だけでは、結果を説明できないという点です。

高齢で病気を抱えていても、不許可となったと報告されているケースがあります。

一方で、許可されたと報告されている事例を見ると、年齢や病気だけではなく、

  • 本国で一人で生活を続けることが現実的に可能なのか
  • 本国に親を扶養・介護できる親族などがいるのか
  • 日本にいる子との間に、これまでどのような扶養・支援関係があったのか
  • 日本にいる子に、親を継続的に扶養できる経済力や生活環境があるのか
  • なぜ日本にいる子が親を扶養する必要があるのか

といった事情が複合的に問題になっていることが分かります。

もちろん、これらが法律上公表された「許可要件」という意味ではありません。

公開されている過去の事例から、個別事情を考える際の重要なポイントとして読み取れるものです。

大切なのは「高齢だから」ではなく、生活の実態

老親扶養を考えるうえで、私が特に重要だと感じるのは、

「その親が本国で生活を維持することが現実的にできるのか」

という点です。

単に「日本にいる子と一緒に暮らしたい」という希望だけではなく、親の年齢、健康状態、日常生活の状況、本国にいる親族、これまでの扶養状況などを踏まえて考える必要があります。

例えば、親に持病があったとしても、本国に配偶者や他の子どもがおり、日常生活について十分な支援を受けられるのであれば、日本で暮らさなければならない必要性については別途説明が必要になるでしょう。

反対に、本国に頼れる親族がおらず、第三者の継続的な支援なしには日常生活を維持することが難しい状況で、日本にいる子が実際に長期間にわたって生活費を送金するなど扶養を続けてきたのであれば、事情は大きく異なります。

つまり、単純な年齢や病名ではなく、その人が置かれている生活状況全体を見る必要があるということです。

日本にいる子との関係も重要になる

もう一つ考えておきたいのが、日本にいる子との関係です。

「親子なのだから扶養するのは当然」と考えたくなるところですが、戸籍上・法律上の親子関係だけではなく、実際にどのような扶養・支援関係が続いてきたのかという事情も、申請内容を説明するうえでは重要になります。

例えば、

「以前から定期的に生活費を送金していた」

「頻繁に連絡を取り合っていた」

「帰国した際には親の生活を支援していた」

などの事情があれば、日本にいる子が突然親を呼び寄せようとしているのではなく、以前から続いている扶養・支援関係の延長として日本での生活を希望しているという説明につながります。

こうした事情についても、単に主張するだけではなく、送金記録など客観的な資料によって説明できるかが重要になってくるでしょう。

老親扶養は「条件を満たせば取れるビザ」ではない

ここが特に注意したいところです。

老親扶養について、

「親が70歳を超えた」

「持病がある」

「日本にいる子に十分な収入がある」

といった事情を一つずつチェックして、

全部当てはまったから許可される

という考え方はできません。

そもそも一般的な「老親扶養ビザ」という制度が設けられているわけではなく、告示外特定活動として個別に判断される問題だからです。

そのため、過去の許可事例とよく似ているからといって、同じ結果になるとは限りません。

反対に、過去の不許可事例と一部似ているからといって、必ず不許可になるというものでもありません。

過去の事例は、あくまで判断材料の一つです。

重要なのは、その申請人固有の事情を整理し、なぜ日本で親を扶養する必要があるのかを具体的に説明できるかということになります。

許可された活動は「指定書」で確認する

そして「特定活動」を理解するときに、もう一つ知っておきたいのが**「指定書」**です。

特定活動は、同じ「特定活動」という在留資格であっても、外国人によって認められている活動内容が異なります。

そのため、具体的にどのような活動が認められているのかは、通常、**旅券(パスポート)に添付される「指定書」**によって確認します。出入国在留管理庁も、特定活動の具体的な内容については指定書を確認するよう案内しています。

つまり、仮に老親扶養として告示外特定活動が認められた場合も、「老親扶養」という新しい在留資格が与えられるということではありません。

在留資格はあくまで**「特定活動」**であり、その外国人について指定された具体的な活動内容を指定書で確認する、という仕組みになります。

「特定活動は分かったけれど、指定書って何?」

と思われた方もいるかもしれません。

指定書については少し分かりにくい仕組みなので、別の記事で詳しく解説します。

→ 在留資格「特定活動」の指定書とは? 在留カードだけでは活動内容が分からない理由

まとめ

外国にいる高齢の親を日本へ呼び寄せる「老親扶養」は、通常の在留資格のように、明確な要件を一つずつ満たしていけば許可されるという性質のものではありません。

だからこそ重要なのは、年齢や病名といった一つの条件だけを見るのではなく、その親が本国でどのような生活をしており、なぜ日本にいる子による扶養が必要なのかを具体的に整理することです。

また、インターネット上で紹介されている過去の許可事例や不許可事例も参考にはなりますが、それだけで自分のケースの結果を判断することはできません。

老親扶養は、家族ごとに事情が大きく異なる、個別性の高い問題です。

だからこそ、まずは「何歳だから」「病気だから」と結論を出すのではなく、その家族にどのような事情があるのかを丁寧に整理するところから始める必要があります。


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