岐阜の地元野菜×インド・ネパール料理。AIに新メニューを考えさせたら驚いた話

目次

何気なくAIに新メニューのアイデアを聞いてみた

現在、私はあるインド・ネパール料理店の補助金申請に携わっています。

今回の案件では、補助金申請だけでなく、新メニューの開発についても任されており、もちろん、最終的には実際に調理を担当する料理人と相談しながら、メニューを形にしていく予定です。

その中で、岐阜県の地元食材を活用した新しい料理を考えることになりました。

せっかくなら、単に地元野菜を使用するだけではなく、インド・ネパール料理と岐阜県の食文化を組み合わせた、いわゆるフュージョン料理のようなものを考えてみたい。

特に今回は、カレーやナンといった定番料理とは別に、お酒と一緒に楽しめる単品メニューを充実させたいと考えていました。

そこで、ふと思いついたんです。

「ChatGPTに料理のアイデアを考えてもらったら、どんなものが出てくるんだろう?」

正直なところ、そこまで期待していたわけではありませんでした。

何か面白いヒントでも見つかればいい。その程度の気持ちでした。

ところが、実際に出てきた提案を見て、少し驚きました。

AIが提案してきた6つの創作料理

今回、ChatGPTにお願いしたのは、岐阜県の地元野菜を使用した、インド・ネパール料理をベースとするお酒に合う単品メニューの提案です。

すると、次の6品が提示されました。

① 岐阜県産野菜のパコラ

十六ささげや宿儺かぼちゃなど、岐阜県産の野菜を使用したインド風の天ぷら。スパイスを加えた衣で揚げ、ビールなどに合う一品に仕上げるというアイデア。

② 飛騨紅かぶのスパイスアチャール

飛騨地方の伝統野菜である赤かぶを、ネパール料理のアチャールに応用するというもの。マスタードシードや唐辛子などを使用した、スパイスの効いた漬物をイメージしている。

③ 岐阜県産野菜のクミン炒め

十六ささげや飛騨一本太ねぎなどを、クミンやニンニク、唐辛子で炒める料理。インド料理のジーラ炒めを応用したもの。

④ あじめコショウのチキンティッカ

岐阜県中津川市周辺で栽培されている伝統的な唐辛子「あじめコショウ」を、チキンティッカの味付けに取り入れるというアイデア。

⑤ 宿儺かぼちゃのスパイスコロッケ

岐阜県の特産野菜である宿儺かぼちゃを使用し、クミンやコリアンダーなどのスパイスを組み合わせたコロッケ。インド料理のアルティッキを応用した創作料理です。

⑥ 飛騨ねぎとチキンのセクワ

飛騨一本太ねぎと鶏肉を組み合わせ、ネパール料理のセクワというスパイス焼きに仕上げるアイデア。

しかも、これらの提案には、それぞれ参考となる料理の画像までChat gptが独自に作って添えられていました。

※これらはChatGPTが考案した創作メニュー案であり、実際に調理・検証されたレシピではありません。また、掲載する画像も提案料理そのものの実物写真ではなく、既存料理を参考にしたイメージです。

驚いたのは、料理として成立しそうな組み合わせだったこと

ここで誤解してほしくないのは、AIが完成度の高いレシピを作ったから驚いたわけではないということです。

実際に調理するとなれば、スパイスの種類や配合、調味料の分量、下処理、火入れ、食感など、考えなければならないことはいくらでもあります。

AIが提示したレシピをそのまま再現したところで、おいしい料理になるかどうかはわかりません。

最終的には、料理人自身の経験と技術によって仕上げていく必要があると私は思います。

ただ、私が驚いたのは、もっと手前の部分の話です。

「これなら実際に料理として成立しそうだな」と思えるアイデアが、短時間で複数出てきたこと。

例えば、飛騨紅かぶをアチャールにするという発想。

もともと赤かぶは漬物として親しまれている野菜であり、ネパール料理にもアチャールという漬物や和え物の文化がある。

両者には共通する部分があり、組み合わせとして無理がない。

また、宿儺かぼちゃをスパイスコロッケにするというアイデアも面白いです。

宿儺かぼちゃの甘みや食感を生かしながら、インド料理の調理技法を取り入れる。実際に試作してみなければわからない部分はあるものの、十分に検討する価値がありそうです。

こうした提案を見ていると、単に食材と料理名を無作為に組み合わせているわけではないことがわかります。

食材の特徴と、既存料理の調理方法や構造を踏まえた組み合わせになっている。

もちろん、提案された料理がすべて成功するとは限りません。

それでも、料理人が次の工程に進むためのアイデアとしては、十分に使えるものでした。

料理開発で時間がかかるのは、最初のアイデアを生み出す工程

私は以前、イタリアで料理の仕事に携わっていた経験があります。

その経験から感じるのは、新しい料理を開発するとき、意外と時間がかかるのが「何を作るか」を考える工程だということです。

もちろん、実際の調理工程も簡単ではありません。

調味料の配合を変えたり、火入れを調整したり、食材の組み合わせを見直したりと、試作を繰り返す必要があります。

ただ、そもそも何を作るのかという方向性が決まらなければ、試作に入ることすらできません。

特にフュージョン料理の場合、異なる食文化や調理技法をどのように組み合わせるかというところから考えなければならない。

ここがなかなか難しい。

ところが、今回ChatGPTは、その最初のアイデアを考える工程を、わずかな時間で進めてしまいました。

しかも、一つや二つではなく、複数の候補を提示してきた。

これは料理開発の効率を考えると、かなり大きなことだと私は思います。

料理人には、どうしても自分の好みというバイアスがある

もう一つ、今回のやり取りを通じて改めて考えたことがあります。

それは、料理人自身の好みが、新しい料理の発想に与える影響です。

人間は誰でも、自分の好きなものや慣れ親しんだものを起点にして物事を考えやすい傾向があります。

料理人も例外ではありません。

例えば、私はラーメンであれば、塩ラーメンや醤油ラーメン、魚介系のあっさりしたものが好きです。

あっさりしていながら、しっかりとコクのあるラーメンが特に好みです。

そのため、仮に新しいラーメンを開発することになれば、自然とそうした方向性を考えると思います。

一方で、いわゆる二郎系ラーメンのような、濃厚でボリュームのある料理は、自分の好みからは少し離れています。

もちろん、ビジネスとして料理を開発するのであれば、自分の好みだけで判断するわけにはいきません。

顧客の需要や市場の動向も考える必要があります。

しかし、頭では理解していても、自分があまり好まない料理を積極的に発想するのは、案外難しいものです。

これは経験不足というより、人間が持つ自然なバイアスなのだと思います。

そして、今回のAIの提案には、そのバイアスを乗り越える可能性があると感じました。

AIの価値は、自分では思いつかない選択肢を提示してくれること

例えば、AIが自分の好みとは異なる方向性の料理を提案してきたとする。

それを見て、

「自分はこういう料理をあまり食べないけれど、好きなお客さんはいるだろうな」

「この組み合わせなら、こういう味付けにすると面白そうだ」

「自分だったら、調理方法を少し変えてみたい」

といった発想が生まれる。

ここが非常に重要だと思います。

AIが提案した料理を、そのまま作る必要はありません。

むしろ、提案された料理を出発点にして、自分自身の発想を広げていけばいい。

例えば、宿儺かぼちゃのスパイスコロッケというアイデアを見たとき、それを必ずコロッケとして完成させる必要はありません。

揚げ方を変えてもいいし、形状を変えてもいい。使用するスパイスや調理技法を変えてもいい。

最初のアイデアが一つあるだけで、そこから別の料理へと発展させることができます。

そして、料理人であれば、その先の展開は自分の経験を生かして考えられる。

つまり、AIに求めているのは完成した料理ではなく、発想を広げるための土台です。

今回のやり取りを通じて、私はこの点に大きな可能性を感じました。

参考画像があることで、さらに発想が広がる

もう一つ印象的だったのが、料理の提案と一緒に画像が提示されたことです。

これは想像以上に大きかったです。

料理名と説明文だけでも、ある程度は完成形を想像できます。

しかし、実際に料理の参考画像があると、格段に頭の中でイメージを組み立てやすくなります。

「この形なら、別の食材も使えそうだ」

「盛り付けはもう少し変えたい」

「この料理なら、こういうソースを合わせても面白そうだ」

そんなふうに、次の発想が自然と生まれてくる。

大切なのは、画像の料理を忠実に再現することではありません。

あくまで参考として眺めながら、そこから自分なりの料理を考えることです。

料理人にとっては、完成された設計図がなくても、ある程度の視覚的なヒントがあれば、十分なのではないでしょうか。

今回のように、料理のアイデアと参考画像が同時に提示されることで、発想の幅はさらに広がると私は感じました。

AIによって料理人の仕事はどう変わっていくのか

今回の経験を通じて感じたのは、AIが料理人の仕事をすべて代わりに行うという話ではないということです。

少なくとも、実際に料理を作り上げるためには、まだ人間の経験や技術が欠かせません。

食材の状態を見極め、調理中の香りや食感を確認し、味を調整する。

そうした工程は、実際に調理する人間が担うことになります。

一方で、新しい料理のアイデアを考えるという工程については、AIが大きな役割を果たせる可能性があると私は思います。

例えば、これまで一人で10品の新メニューを考えていたとする。

そこにAIを活用すれば、短時間で30品、40品といった候補を出し、その中から実際に使えそうなものを選別することもできる。

もちろん、数が多ければいいというわけではありません。

重要なのは、料理人自身の発想だけでは出てこなかった選択肢に触れられることです。

また、顧客の好みに合わせて、異なる方向性の料理を考えることもできる。

辛い料理が好きな人、さっぱりした料理を好む人、野菜中心の料理を求める人、ボリュームのある料理を好む人。

それぞれの嗜好を想定してアイデアを出すことで、料理人自身の好みに偏らないメニュー開発にもつながる。

そう考えると、AIは料理人の代わりというより、料理人の発想を補助し、選択肢を増やす存在になっていくのかもしれません。

AIは料理人の創造性を奪うのではなく、広げる道具になる

今回、何より驚いたのは、AIがここまで実用的な料理のアイデアを提示できるようになっていたことです。

もちろん、実際においしい料理が完成するかどうかは別問題です。

今回提案された6品についても、まだ試作したわけではありません。

今後、料理人と相談しながら、どのアイデアを採用するか、どのような調理方法にするかを検討していくことになります。

ただ、今回の経験で、料理開発におけるAIの使い方が一つ見えた気がします。

これまでは、料理のアイデアを考えるところから、実際に完成させるところまで、料理人自身が担ってきました。

しかし、これからは最初の発想を生み出す工程の一部をAIに任せることで、人間はその先の試作や改良に、より多くの時間を使えるようになるかもしれない。

そして何より、自分自身の好みや経験だけでは思いつかなかった料理に出会える。

私は、ここに大きな価値があると感じています。

AIに料理を考えてもらうことと、AIに料理を作ってもらうことは、まったく違う。

料理を完成させるのは、あくまで人間です。

しかし、その最初の一歩となるアイデアをAIが提示してくれるだけでも、料理開発のあり方は大きく変わる可能性があります。

今回、何気なくChatGPTに尋ねたことから、思いがけず面白い発見につながりました。

AIの進歩というのは、こうした何気ない場面でこそ、実感するものなのかもしれません。


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