永住権を失うのはなぜ?海外滞在中に起こり得る再入国許可の落とし穴

日本の永住者ビザを取得すると、ビザの更新手続きが不要になり、日本で長期間安定して生活できるようになります。

しかし、永住者であっても、海外への渡航には注意しなければならないことがあります。

それが「再入国許可」の有効期間です。

日本の永住者にはビザの満了日がありませんが、海外に出国した後、いつまでも自由に日本へ戻れるというわけではありません。

再入国許可の有効期間を過ぎてしまうと、たとえ永住者であっても、今持っている永住者ビザを失うことになります。

しかも、海外で事故に遭ったり、病気で入院したりして、本人の意思では日本に戻れなかった場合でも、原則として同じ取扱いになります。

今回は、永住者が海外へ渡航する際に知っておきたい「再入国許可」と「みなし再入国許可」の違い、海外滞在中に帰国できなくなった場合の取扱い、そして永住資格を失った場合の問題について解説します。

※今回の記事では、永住者ビザを中心に解説していますが、特別永住者ビザを持っている方も同じように扱われるので、注意が必要です。

目次

1.永住者でも再入国許可が必要になる

日本に在留する外国人が、一時的に海外へ出国し、引き続き同じ在留資格で日本に戻るためには、原則として再入国許可が必要です。

これは永住者も例外ではありません。

永住者にはビザ更新の期間制限はありませんが、日本から出国する際の再入国手続きまで不要になるわけではないのです。

現在、日本には大きく分けて次の2つの制度があります。

  • 再入国許可
  • みなし再入国許可

どちらも、一時的に日本を離れる外国人が、永住者ビザを維持したまま再入国するための制度です。

しかし、有効期間や海外での延長手続きには大きな違いがあります。

2.再入国許可とみなし再入国許可の違い

みなし再入国許可とは

みなし再入国許可とは、有効なパスポートと在留カードを持つ外国人が、原則として出国から1年以内(特別永住者は2年以内)に日本へ戻る場合、事前に通常の再入国許可を取得しなくてもよい制度です。

永住者もこの制度を利用できます。

例えば、母国への一時帰国や海外旅行など、短期間の渡航では便利な制度です。

ただし、みなし再入国許可の有効期間は、原則として出国した日から1年間です。

そして、みなし再入国許可は、海外で有効期間を延長することができません。

この点が、通常の再入国許可との大きな違いです。

通常の再入国許可とは

通常の再入国許可は、日本を出国する前に出入国在留管理局で申請して取得するものです。

永住者の場合、有効期間は最長5年間(特別永住者は6年)です。

さらに、海外滞在中にやむを得ない事情が生じ、許可の有効期間内に日本へ戻れなくなった場合には、日本大使館や総領事館などで延長を申請できる制度があります。

延長できる期間は1回につき最長1年間で、当初の許可の効力が生じた日から通算6年間が上限です。

つまり、永住者であれば、通常の再入国許可によって最長5年間、海外での延長が認められた場合には通算最長6年間(特別永住者は最長7年)、再入国許可の有効期間を確保できることになります。

なお、通常の再入国許可には1回限り有効なものと、有効期間内に繰り返し出入国できる数次再入国許可があります。

2つの制度の比較

項目みなし再入国許可通常の再入国許可
出国前の申請原則不要必要
永住者の有効期間原則1年間最長5年間
海外での延長不可一定の条件で可能
1回の延長期間―最長1年間
延長を含む上限1年間(特別永住者は2年)通算最長6年間(特別永住者は7年)

3.海外で事故や病気に遭い、日本に戻れなくなったら?

ここで一つ、具体的な例を考えてみます。

日本で長年生活し、永住者ビザを取得した外国人が、母国へ一時帰国したとします。

本人は半年後に日本へ戻る予定で、帰国便の航空券も購入していました。

ところが、母国で交通事故に遭い、長期間入院することになりました。

医師からは飛行機への搭乗を禁止され、予定していた日に日本へ帰ることができません。

その後も治療が続き、結果として出国から1年が経過してしまいました。

この場合、どうなるのでしょうか。

みなし再入国許可の場合

永住者ビザを持っている外国人が、みなし再入国許可で出国していた場合、原則として出国から1年を経過すると、その許可は失効します。

そして、事故や病気などのやむを得ない事情があっても、みなし再入国許可の有効期間を延長することはできません。

帰国するための航空券を購入していたとしても、医師から渡航を禁止されていたとしても、法律上の有効期間が延びるわけではないのです。

結果として、期限内に再入国できなかった場合、永住者ビザを失うことになります。

本人が日本へ戻る意思を持っていたかどうか、帰国できなかったことについて本人に落ち度があったかどうかによって、当然に結論が変わる制度にはなっていません。

通常の再入国許可の場合

一方、通常の再入国許可で出国していた場合は事情が異なります。

病気や事故などの理由で有効期間内に日本へ戻れないときは、海外の日本大使館や総領事館などで、再入国許可の有効期間の延長を申請することができます。

申請の際には、医師の診断書など、期限内に帰国できない理由を証明する資料が必要になります。

ただし、延長は無条件で認められるわけではありません。

また、延長には法定の上限があり、永住者であっても当初の許可の効力発生日から6年間(特別永住者の方は7年間)を超えることはできません。

そのため、通常の再入国許可を取得していても、無期限に海外滞在を続けられるわけではないのです。

4.再入国許可の期限を過ぎて永住資格を失った場合、救済措置はあるのか

ここが、永住者にとって特に重要な問題です。

例えば、海外での事故や病気が原因で再入国許可の有効期間を過ぎてしまった場合、何らかの救済措置によって永住資格を維持できるのでしょうか。

残念ながら、現行制度では、事故や病気などの理由によって期限を過ぎた場合に、失われた永住資格を自動的に回復させる一般的な制度は設けられていません。

みなし再入国許可については、入管法第26条の2第3項により、通常の再入国許可の海外延長に関する規定が適用されないことが明記されています。

また、通常の再入国許可についても、海外での延長には上限があり、その上限を超えて延長することはできません。

過去には、新型コロナウイルス感染症の影響で日本へ戻れなくなった外国人に対して、特別な取扱いが設けられたことがありました。

しかし、これは特殊な状況に対応するための措置であり、通常時の事故や病気にも適用される一般的な救済制度ではありません。

永住資格を失ったことについて法的に争うことはできるのか

永住資格を失ったことについて、裁判などの法的手段を検討すること自体は可能です。

ただし、訴訟を提起することと、裁判所で請求が認められることは別の問題です。

再入国許可の有効期間や延長の上限は法律で定められており、事故や病気などを理由に期限切れの効果を覆す一般的な救済規定も設けられていません。

したがって、単に「本人の責任ではなく、やむを得ない事情で帰国できなかった」という理由だけで、失った永住資格の回復が認められると考えることはできません。

もっとも、具体的な事情や行政側の対応によって法的な争点は異なるため、個別の事案について一律に結論を出すこともできません。

5.永住資格を失った後、もう一度永住許可を申請できるのか

再入国許可の期限切れによって永住者の在留資格を失った場合でも、将来、改めて永住許可を申請する道が完全に閉ざされるわけではありません。

しかし、以前に永住者だったという理由だけで、再び永住許可が与えられるわけではありません。

永住許可には、原則として引き続き10年以上日本に在留していることなど、さまざまな審査基準があります。

一度永住資格を失い、長期間海外で生活していた場合には、現在の在留状況などに基づいて改めて審査を受けることになります。

これは、技術・人文知識・国際業務などの就労資格とは事情が異なる部分です。

就労資格であれば、在留資格を失っても、仕事内容や学歴・実務経験、受入れ企業などの要件を満たすことで、再び在留資格を取得できる場合があります。

一方、永住許可は日本での継続的な在留実績や生活状況なども審査されるため、再取得が容易とは限りません。

長年日本で生活し、ようやく取得した永住資格であっても、海外滞在中の再入国許可の期限切れによって失われることがあるのです。

6.永住者が海外へ渡航する前に確認しておきたいこと

ここまで説明したように、みなし再入国許可と通常の再入国許可では、海外滞在中に予期せぬ事情が発生した場合の対応が大きく異なります。

数日間の海外旅行や、短期間の一時帰国であれば、みなし再入国許可は便利な制度です。

しかし、長期間の海外滞在を予定している場合や、帰国時期がはっきり決まっていない場合には、通常の再入国許可を取得しておくことも検討した方がよいでしょう。

特に、海外で家族の介護をする予定がある場合、長期の治療を受ける場合、仕事の都合で滞在期間が延びる可能性がある場合などは、注意が必要です。

また、通常の再入国許可を取得した場合でも、有効期間は必ず確認し、延長が必要になったときは期限が切れる前に在外公館へ相談することが重要です。

まとめ

実際に、以前このような相談を受けたことがあります。

相談者は日本の永住者を持っていた方で、みなし再入国許可を利用して母国へ一時帰国していました。

ところが、滞在中に交通事故に遭い、入院することになってしまいました。医師からも飛行機への搭乗を止められ、日本へ帰国したくても帰国できない状況になってしまったのです。

その結果、みなし再入国許可の有効期間である1年を過ぎてしまい、永住者の資格を失うことになりました。

本人は日本で再び生活することを希望しており、以前から日本で働いていたこともあって、現在は就労系のビザを取得し、将来的に永住許可の再取得を目指す方向で検討しています。

このように、海外への渡航では何が起こるかわかりません。

もちろん、必要以上に心配することはありませんし、数日間の海外旅行や数週間程度の一時帰国であれば、みなし再入国許可は非常に便利な制度です。

ただし、海外で予期せぬ事故や病気に遭い、予定どおり日本へ戻れなくなることもあります。

特に永住者の場合、一度失ってしまうと、再び永住許可を取得することは簡単ではありません。

そのため、海外への長期滞在を予定している方や、帰国時期が不確実な方、あるいは万が一の事態に備えておきたい方は、みなし再入国許可ではなく、通常の再入国許可を取得しておくことも一つの方法です。

通常の再入国許可は、出国前に出入国在留管理局で申請する必要があるため、みなし再入国許可と比べると手続きに手間がかかります。

なべ行政書士事務所では、再入国許可申請のサポートも行っています。

海外への渡航を予定している方で、再入国許可の手続きやビザ申請について不安がある場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。


【なべ行政書士事務所】
三重県四日市市天カ須賀5丁目1番17-7号
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