帰化申請に年収500万円は必要か?一度は帰化を断念した方が再び申請を目指せた理由

先日、帰化申請を希望されているご家族の事前相談に同行するため、法務局へ行ってきました。

今回のご相談は、ご家族6人の帰化申請に関するものです。

実は、今回の依頼者は以前にもご自身で法務局に相談されていました。しかし、必要書類を集め、日本語能力の確認まで受けたにもかかわらず、最終的には収入面の問題を指摘され、一度は帰化申請を諦めてしまったという経緯がありました。

今回、私が同行して改めて相談したところ、事前に確認していた国籍法の規定が重要なポイントとなりました。

帰化申請では、一般的な条件だけでなく、申請者の家族関係などによって適用される特例を正しく理解することが大切です。

今回は、実際に法務局で経験した出来事をご紹介します。

目次

必要書類を集め、日本語テストも受けたのに帰化申請を断念

今回の依頼者は、以前から日本国籍の取得を希望しており、ご自身で法務局に何度か足を運んでいたそうです。

法務局から案内された必要書類を一つずつ集め、指示に従って準備を進めていました。

また、帰化申請に必要となる日本語能力についても確認を受けており、日本語テストは2回実施されたとのことでした。

日本語テスト自体はそれほど難しい内容ではなく、特に問題なく対応できたそうです。

ところが、必要書類を揃えて改めて法務局へ相談に行った際、今度は収入面について懸念を示され、帰化の許可が難しいかもしれないという説明を受けたそうです。

依頼者としては、時間をかけて必要書類を集め、日本語能力の確認も受けてきたにもかかわらず、後から収入の問題を指摘されたことに納得がいかなかったようです。

その結果、帰化申請を一度諦めてしまったとお話しされていました。

今回の事前相談でも「年収500万円」という説明が

今回、私が同行して法務局で事前相談を行った際にも、収入に関する話が出てきました。

最初に対応された職員の方から、2026年10月から収入に関する審査が厳しくなり、年収500万円程度が必要になるという趣旨の説明がありました。

さらに、夫婦の場合には、それぞれの収入についても厳しく判断されるというお話でした。

その説明を聞いて、依頼者は困惑されている様子でした。

しかし、私自身はその説明に疑問を感じました。

なぜなら、今回の依頼者については、事前に家族関係や国籍法の規定を確認しており、一般的な帰化申請とは異なる特例が適用されると考えていたからです。

国籍法第8条第1号によって生計条件が免除される場合がある

帰化申請には、一般的に住所条件、能力条件、素行条件、生計条件などが設けられています。

このうち生計条件は、国籍法第5条第1項第4号に定められており、本人または生計を一にする配偶者その他の親族の資産や技能によって生活を営むことができるかどうかが判断されます。

つまり、すべての申請者について、本人に一定額以上の年収が必要というわけではありません。

さらに、国籍法には、一定の条件に該当する方について、通常の帰化条件の一部を緩和する規定があります。

その一つが、国籍法第8条第1号です。

この規定では、日本国民の子(養子を除く)で、日本に住所を有する外国人について、次の条件を備えていなくても帰化を許可できるとされています。

  • 住所条件(国籍法第5条第1項第1号)
  • 能力条件(同第2号)
  • 生計条件(同第4号)

このように、一定の条件が緩和される帰化は、一般に「簡易帰化」と呼ばれています。

今回の依頼者については、日本国籍を持つ父親との法律上の親子関係が成立しており、日本にも住所があることから、この規定の適用が考えられるケースでした。

そのため、通常の帰化申請と同じ生計条件を前提に判断する必要はないと考えていました。

法務局の職員に国籍法の条文を示して説明

そこで私は、今回の依頼者の家族関係を改めて説明し、国籍法第8条第1号に該当することから、生計条件が免除されるケースである旨をお伝えしました。

単に「収入要件は関係ないのではないか」と質問するのではなく、具体的な条文と今回の事情を照らし合わせて説明しました。

その後、実際に今回の案件を担当される職員の方にも対応していただき、相談を進めることができました。

担当職員の方は、こちらからの質問にも的確に回答してくださり、申請者ごとの必要書類についても一つずつ確認することができました。

今回の事前相談では、生計条件に関する説明によって手続きが止まることはなく、帰化申請に向けた準備を引き続き進められることになりました。

もちろん、現時点では帰化の許可が出たわけではありません。

今後、必要書類を揃えて申請し、法務局による審査を受ける必要があります。

それでも、一度は帰化申請を諦めていた依頼者にとって、再び申請に向けて進められるようになったことは、大きな一歩だったと思います。

法務局で難しいと言われても、必ずしも申請できないとは限らない

今回の経験を通じて、改めて感じたことがあります。

それは、法務局で帰化が難しいという説明を受けたとしても、その説明が自分自身に適用される法律上の条件と一致しているか、確認することが大切だということです。

もちろん、法務局の職員の方々も、多くの相談に対応されています。

今回の説明についても、どのような事情や認識に基づいて行われたのか、すべてを把握しているわけではありません。

そのため、職員の対応そのものを批判するつもりはありません。

しかし、帰化申請を希望する方の多くは、国籍法の条文や簡易帰化の制度について詳しく知っているわけではありません。

そのような状況で、法務局から「収入面で難しいかもしれない」と説明されれば、自分には帰化する資格がないのではないかと考えてしまうこともあるでしょう。

実際、今回の依頼者も、そうした説明を受けたことで一度は帰化申請を諦めていました。

だからこそ、一般的な条件だけで判断するのではなく、申請者それぞれの事情に応じて、どの法律が適用されるのかを確認することが重要だと感じています。

行政書士が帰化申請に関わる意味

帰化申請の手続きは、行政書士に依頼しなければできないものではありません。

ご本人が必要書類を集め、法務局に相談しながら申請することも可能です。

しかし、帰化申請では、国籍、家族関係、出生や認知の経緯、婚姻歴、生活状況などによって、必要書類や適用される条件が異なります。

特に、簡易帰化に該当するかどうかは、申請者の状況と国籍法の規定を照らし合わせて判断する必要があります。

今回、私が事前に国籍法の規定を確認していなければ、法務局で収入に関する説明を受けた際、そのまま話が進んでしまっていたかもしれません。

一方で、事前に家族関係を整理し、適用される条文を把握していたからこそ、その場で根拠を示して説明することができました。

行政書士の役割は、単に必要書類を集めたり、申請書を作成したりすることだけではないと考えています。

依頼者の事情を正確に把握し、適用される法律を確認し、必要な場面で法的根拠を示して説明することも、大切な役割の一つです。

今回の事前相談は、そのことを改めて実感する機会となりました。

まとめ|一度帰化申請を諦めた方も、改めて条件を確認してみてください

今回の依頼者は、以前から帰化を希望し、必要書類の収集や日本語能力の確認まで進めていたにもかかわらず、収入面への不安から一度は申請を諦めていました。

しかし、今回の事前相談では、国籍法第8条第1号の適用について具体的に説明し、申請に向けた必要書類の確認を進めることができました。

帰化申請には一般的な条件がありますが、すべての方に同じ条件が適用されるわけではありません。

日本人の父母がいる方や、日本人と結婚している方など、一定の事情がある場合には、通常の帰化条件の一部が緩和されることがあります。

過去に収入や在留期間などを理由として帰化申請を諦めた方も、実際には別の規定が適用される可能性があります。

一度難しいと言われたからといって、そこで帰化を諦めるのではなく、ご自身に適用される条件を改めて確認してみることが大切です。

当事務所では、帰化申請に関するご相談や、申請者の事情に応じた必要書類の確認、法務局での事前相談の同行などを行っています。

帰化申請についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


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