2027年4月1日から、これまでの技能実習制度に代わる新しい「育成就労制度」が始まります。
育成就労制度では、外国人の受入れ方法や転籍に関するルールなど、さまざまな変更が行われます。
その中でも、今回取り上げるのが外国人に対する日本語教育の仕組みの変更です。
これまで技能実習制度では、監理団体が自ら日本語教育を実施したり、外部の研修施設に委託したりする方法が一般的に行われてきました。
しかし、育成就労制度では、日本語教育を提供する機関や教員について、新たな要件が設けられます。
今回は、技能実習制度と育成就労制度における日本語教育の違いや、既存の日本語教育施設に関係する経過措置について解説します。
1. 技能実習制度における日本語教育の仕組み
これまでの技能実習制度では、外国人技能実習生が日本に入国した後、企業で働き始める前に「入国後講習」を受ける必要がありました。
入国後講習では、日本語だけでなく、日本での生活に必要な知識や法律、技能実習生を保護するための制度などについて学びます。
この入国後講習は、主に監理団体が中心となって実施してきました。
監理団体が自前の研修施設を運営するケース
比較的規模の大きな監理団体では、自ら研修施設や日本語教室を設けて、技能実習生への教育を実施しているケースがあります。
例えば、監理団体が所有または借り受けた施設に教室や宿泊設備を設け、日本語講師を雇用して講習を行う方法です。
技能実習生は入国後、こうした施設で一定期間の講習を受け、その後、受入れ企業での技能実習を開始します。
外部の研修施設に委託するケース
一方、規模の小さな監理団体では、自前の研修施設を持たず、外部の研修施設に入国後講習を委託するケースもあります。
こうした施設は、一般的に「入国後講習施設」や「技能実習生研修センター」などと呼ばれています。
日本語教育だけでなく、生活指導や法的保護に関する講習などをまとめて受託している施設もあります。
このように、技能実習制度では、監理団体が自ら講習を実施する方法と、外部の研修施設に委託する方法がありました。
また、日本語教育を行うために、必ずしも文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関である必要はありませんでした。
2. 育成就労制度では日本語教育の仕組みが変わる
2027年4月から始まる育成就労制度では、外国人に対する日本語教育の位置付けが大きく変わります。
新制度では、日本語能力の向上が重要な目標の一つとなり、日本語講習についても一定の基準が設けられています。
具体的には、原則として、文部科学大臣の認定を受けた「認定日本語教育機関」の「就労のための課程」による日本語講習が求められます。
認定日本語教育機関とは?
認定日本語教育機関とは、日本語教育の質を確保するため、教育内容や教員、施設などについて一定の基準を満たし、文部科学大臣から認定を受けた日本語教育機関のことです。
認定の対象となる教育課程には、「留学」「就労」「生活」の3つの分野があります。
育成就労制度で関係するのは、このうち「就労のための課程」です。
そのため、従来の技能実習制度で日本語教育を実施していた研修施設であっても、新制度で求められる日本語講習を引き続き提供するためには、新たな要件への対応が必要になります。
つまり、経過措置を除き、原則として文部科学大臣から認定を受けた日本語教育機関による講習が求められるということです。
学校法人以外でも認定を受けることはできる?
ここで疑問になるのが、認定日本語教育機関を設置できるのは、学校法人などに限られるのかという点です。
結論から言えば、学校法人でなくても、文部科学大臣の認定を受けることは可能です。
例えば、株式会社などの民間事業者であっても、必要な認定基準を満たせば、日本語教育機関として認定を受けることができます。
したがって、これまで技能実習生の日本語教育を行ってきた協同組合や民間の研修センターについても、認定を取得する道が開かれています。
ただし、認定を受けるためには、教員の配置、施設・設備、教育課程、経営基盤など、文部科学省が定める基準を満たす必要があります。
これまで技能実習生向けの日本語講習を実施していたという実績だけで、自動的に認定されるわけではありません。
つまり、育成就労制度では、従来の研修施設が一律に排除されるのではなく、一定の基準を満たした事業者が、認定日本語教育機関として日本語教育を提供できる仕組みになっています。
日本語講習は就労開始前だけではない
育成就労制度では、外国人が働き始める前の日本語講習だけでなく、就労開始後の日本語能力向上についても制度上の仕組みが設けられています。
原則として、就労開始前にはA1相当の日本語能力試験への合格、または100時間以上のA1相当講習の受講が必要です。
さらに、育成就労期間中には、A2相当の日本語能力を目標とした100時間以上の講習を受ける機会を提供することが求められます。
ただし、所定の日本語能力試験に合格している場合には、対応する講習が不要となる場合があります。
3. 既存の日本語教育施設には経過措置が設けられる
育成就労制度が始まるからといって、これまで日本語教育を行ってきた研修施設が、直ちにすべて利用できなくなるわけではありません。
新制度では、既存の日本語教育施設にも配慮した経過措置が設けられています。
具体的には、育成就労制度の施行後5年間を目途とする当分の間、認定日本語教育機関以外の施設でも、一定の要件を満たせば日本語講習を提供することが認められます。
経過措置で求められる要件
経過措置では、主に次のような要件が設けられています。
- 登録日本語教員が日本語講習を担当すること
- 教員1人に対する生徒数が20人以下であること
- その他、日本語教育を適切に実施するための要件を満たすこと
ここでいう「登録日本語教員」とは、国の登録を受けた日本語教育の資格を持つ教員のことです。
つまり、文部科学大臣の認定を受けていない研修施設であっても、登録日本語教員を配置するなど、一定の要件を満たせば、経過措置の期間中は日本語講習を提供できる仕組みになっています。
経過措置はいつまで続くのか?
経過措置については、現時点では「施行後5年間を目途とする当分の間」とされています。
そのため、2027年4月の制度開始から5年後に、必ず経過措置が終了すると決まっているわけではありません。
ただし、経過措置はあくまでも暫定的な仕組みです。
今後は、認定日本語教育機関による日本語教育を基本とする制度へ移行していくことが想定されています。
これまで技能実習生向けの日本語教育を行ってきた監理団体や研修施設にとっては、今後の制度運用を確認しながら、対応を検討していく必要があります。
4. まとめ
今回の育成就労制度における日本語教育の変更について、私が特に注目しているのは、日本語教育の質を一定の水準に保とうとする国の方針です。
これまでの技能実習制度では、監理団体や民間の研修施設などが日本語教育を担ってきました。
もちろん、従来の制度でも日本語講習には一定の基準が設けられていましたが、実際の教育内容や指導方法については、各事業者の取組によって違いがあったと考えられます。
今回、文部科学大臣による認定制度を活用することで、こうした教育の質のばらつきを抑え、一定の水準を確保しようとしているのではないでしょうか。
また、これは私個人の見解ですが、今回の制度変更には、今後の外国人労働者の受入れ拡大を見据えた側面もあるのではないかと感じています。
育成就労制度では、これまでの技能実習制度から対象分野の見直しが行われ、資源循環・物流倉庫・リネンサプライ分野など、新たな分野の受入れもスタートします。
今後、さらに受入れ分野や外国人労働者の人数が拡大していけば、従来のように個々の事業者の取組に大きく依存する教育体制では、教育の質に大きなばらつきが生じることになります。
そうした将来を見据え、国が日本語教育の基準を明確にし、一定の質を確保できる仕組みを整えようとしているのではないでしょうか。
今回の日本語教育制度の変更は、単に日本語学校や研修施設に対する規制が厳しくなるという話ではなく、今後の外国人労働者の受入れ体制を整備していくための、一つの重要な制度改革なのではないかと私は考えています。
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