生レバー提供で逮捕というニュースをどう見るか?

※本記事は、特定の店舗や人物を批判・非難する意図はなく、報道内容をもとに制度面からの整理・解説を行うものです。

2026年1月22日、滋賀県内の飲食店において、生レバーの提供をめぐる逮捕事例が報じられました。

今回の事例を題材として、食品衛生法の観点から、いわゆる「一発アウト」と判断される理由について、当事務所の見解を交えながら解説していきます。

目次

事件概要

滋賀県内の飲食店において、常連客限定の「裏メニュー」と称し、牛の生レバーを十分な加熱処理を行わないまま提供していた疑いが持たれています。

関係者からの情報提供を受け、警察が捜査を行った結果、生レバーを提供していた事実が確認され、経営者が逮捕されるとともに、実名で報道される事態となりました。

なぜ生レバーの提供は違法なのか

まず結論として、生レバーの提供が違法とされている理由は、「危険だから」という抽象的な判断ではなく、法律上、明確に禁止されている行為であるためです。

もっとも、「法律で禁止されている=直ちに逮捕・実名報道に至る」とは限りません。

例えば、過去の事例を振り返ると、2023年11月に東京都内で開催されたイベントにおけるマフィンによる食中毒事案では、複数名の体調不良者が発生し、厚生労働省から健康への危険度が最も高い「CLASSⅠ」に分類されたにもかかわらず、実名報道や逮捕には至っていません。

では、今回の生レバー提供事例と、こうしたケースとの間に生じる違いは、どこにあるのでしょうか。

なぜ実名報道なのか?

実名報道の判断基準は、「被害が発生したかどうか」だけで決まるものではありません。

報道や捜査の現場では、「制度上、明確に禁止されている行為が、継続的におこなわれていたかどうか」という点が、
重要な判断材料の一つとされています。

今回の事例について整理すると、次のような点が重なっていたと考えられます。

・生レバーには、過去に死亡事例がある
・生レバーの提供は、食品衛生法上、明確に禁止されている
・常連客限定とはいえ、継続的に提供されていた
・実名を伏せた場合、再発防止や抑止力の面で効果が弱いと判断されやすい

行政や警察は、結果として被害が出たかどうかだけでなく、行為そのものが持つ危険性を重く評価する傾向があります。

実名報道を避けられた「可能性があった行動」

今回の事例で、逮捕および実名報道に至った主な要因は、裏メニューと称して生レバーを継続的に提供していた点にあると考えられます。

特に、報道の中で「客から要望があれば提供していた」との趣旨の説明がなされている点は注意が必要です。

この表現は、事実関係の説明としては正直なものですが、捉え方によっては、今後も提供を続ける意思がある、あるいは違法性を軽視しているように受け取られる可能性があります。

もし、次のような対応が取られていた場合、報道のトーンは異なっていた可能性も考えられます。

・過去の行為として違反を認めていること
・現在はすでに提供を中止していること
・再発防止策について具体的な説明がなされていること

実名報道を避けられるかどうかは、違反行為そのものよりも、その後の対応や是正姿勢がどのように評価されるかによって左右される面があります。

重すぎると感じる理由

報道では詳しく触れられていませんが、こうした事案の多くが、最初から刑事事件として扱われるわけではありません。

一般的には、情報提供や内定を経て、「是正されない」「継続性がある」と判断された場合に、刑事事件化する流れが取られることが多いとされています。

具体的には、次のような段階を経るケースが考えられます。

①情報提供や通報が寄せられる
②内偵や水面下での事実確認が行われる
③立入や事情聴取が行われる(ここが分岐点)

この③の段階では、実質的に是正を求める対応が取られることも少なくありません。

今回の事例では、この段階で是正が確認されなかった、あるいは継続性が認められたと判断された結果、逮捕および実名報道という重い対応に至った可能性が高いと考えられます。

飲食店経営で「感覚」と「制度」がズレる瞬間

本記事を作成している私は、元料理人です。
料理の世界から離れて時間が経つ中で、以前と比べものにならないほど、飲食店を取り巻く食品衛生に関するルールが厳格化していると感じています。

正直なところ、最初にこのニュースに触れたときは、「生レバーを提供しただけで逮捕、しかも実名報道なのか」と、元料理人の立場から強い違和感を覚えました。

もちろん、法律で提供が禁止されている以上、違法であること自体に異論があるわけではありません。
ただ、この違和感の正体は、生レバーという行為そのものではなく、制度の考え方が大きく変わったことにあると感じています。

結論を先に述べると、

・制度が整備される前は「事後対応」
・制度が整備された後は「事前対応」

という考え方への転換が起きています。

制度が整備される前(事後対応)

・生肉の提供自体は、原則として認められていた
・衛生管理が不十分
・食中毒が発生
・危険性が確認される

こうした問題が起きた場合に、行政指導や営業停止といった対応が取られる、いわば「問題が起きてから止める」制度でした。

制度が整備された後(事後対応)

しかし、2011年のユッケ集団食中毒事件をきっかけに、事後対応では人の命を守れないという結論に至り、現在の制度へと移行しています。

・問題が起きる前にリスクを排除する
・危険性が高い行為は、提供そのものを禁止
・現場判断や例外を認めない

この切り替えが起きたことで、現場の感覚と制度の考え方との間にズレが生じやすくなり、それが今回のような違和感につながっていると考えられます。

まとめ

このような「事前にリスクを排除する」という考え方の代表例が、HACCPです。

日本では食品衛生法の改正により、2021年6月から、原則すべての食品関連事業者に対して、HACCPに沿った衛生管理が義務化されました。
規模の大小にかかわらず、飲食店も例外ではありません。
※HACCPについては、制度の背景や考え方を含めて、別の記事で詳しく解説しています。初めて耳にした方や、全体像を知りたい方は、こちらもあわせてご参照ください。

生レバーの提供禁止やHACCPの導入義務化は、飲食業界に携わる方にとって、具体的な制度の中身が分かりにくいと感じられる場面も少なくありません。
それは、勉強不足が原因というよりも、調理現場で培われた衛生感覚と、行政が定める制度との間にある考え方の違いが、十分に共有されてこなかったことが背景にあると感じています。

生レバーの提供をめぐる今回の事例は、「危険だから違法になった」という単純な話ではありません。
食品衛生の分野では、過去の事故を教訓に、「問題が起きてから対応する制度」から「問題が起きる前に防ぐ制度」へと、大きく舵が切られています。

食品衛生法やHACCPは、飲食店経営者を縛るための制度ではなく、事故やトラブルによって経営や人生そのものが大きく揺らぐ事態を未然に防ぐためのものです。

現場の感覚と制度の考え方とのズレを正しく理解することこそが、今回のような違和感を生む背景を解消し、結果として店舗と経営者自身を守ることにつながるのではないでしょうか。


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