育成就労制度にも存在する「法的保護講習」
育成就労制度の運用要領を読んでいて、少し興味深い点がありました。
それは、「法的保護講習」に関する部分です。
育成就労では、外国人が日本へ入国した後、日本語教育などとあわせて、一定時間の講習を実施することが求められています。
その中には、いわゆる「法的保護科目」が含まれており、
- 育成就労法令
- 入管法令
- 労働関係法令
- 社会保険・労働保険
- その他、外国人保護に必要な事項
などについて学ぶ仕組みになっています。
運用要領では、
育成就労法令、入管法令、労働関係法令、その他法的保護に必要な情報について、少なくとも各2時間実施することを目安とし、合計8時間以上実施すること
とされています。
技能実習制度にも存在していた「法的保護講習」
そして、ここで気になったのが、
「これ、技能実習制度とかなり似ているのでは?」
という点でした。
実際に技能実習制度側の運用を確認してみると、技能実習でも、
- 入管法令
- 労働関係法令
- 法的保護に必要な情報
などを学ぶ「法的保護講習」が存在しており、時間数についても「各2時間・合計8時間」という非常に近い構成になっています。
さらに、外部講師についても、
- 行政書士
- 社会保険労務士
- 弁護士
- 地方公共団体職員
などが想定されており、この点も育成就労制度とかなり共通しています。
制度目的は変わっても、運用実務には連続性がある
もちろん、制度目的そのものは大きく変わっています。
技能実習制度は、建前上は「国際貢献」「技術移転」を目的とした制度でした。
一方、育成就労制度は、より現実的に「人材育成・人材確保」を前提とした制度として設計されています。
しかし、実際に運用要領レベルを読んでいくと、
- 入国後講習
- 日本語教育
- 法的保護講習
- 外部講師
- 外国人支援
といった実務部分には、かなりの連続性が見えてきます。
制度名や制度目的は変わっていても、現場レベルの運用については、技能実習制度から引き継がれている部分も多いように感じます。
「技能実習手帳」と「育成就労外国人手帳」
また、技能実習制度では「技能実習手帳」というものが存在していました。
これは、日本で生活する上で必要なルールや相談窓口、労働関係法令などをまとめた、いわば外国人技能実習生向けの生活ハンドブックのようなものです。
そして、育成就労制度でも「育成就労手帳」が予定されています。
現時点では詳細はまだ公表されていませんが、法的保護講習の内容などを見る限り、技能実習手帳と近い性格のものになる可能性もあるのかもしれません。
このあたりにも、技能実習制度との“地続き”の部分が見えてきます。
特定技能制度にも存在する「生活オリエンテーション」
さらに興味深いのは、こうした仕組みは、技能実習や育成就労だけに存在しているわけではないという点です。
例えば、特定技能制度でも「生活オリエンテーション」が義務付けられています。
実際に特定技能外国人を受け入れていた経験から言っても、
- 日本の生活ルール
- 労働法
- 相談窓口
- 行政手続
- 医療
- 災害対応
などについて説明する場面は非常に多く、内容としては、法的保護講習や手帳制度と重なる部分も少なくありません。
制度ごとに名前や建前は違っていても、「外国人が日本で孤立しないよう、最低限の知識を持って生活・労働できるようにする」という思想そのものは、実は共通しているようにも見えます。
「新制度」でありながら、どこか似ている部分もある
育成就労制度は「新制度」として語られることが多いですが、運用要領を細かく読んでいくと、技能実習制度や特定技能制度との“連続性”も、意外と多く見えてきます。
もちろん、
- 転籍制度
- 人材育成の考え方
- 特定技能への接続
- 労働者保護
など、変更された部分も多くあります。
しかし一方で、
- 外国人への法的説明
- 日本社会への適応支援
- 生活オリエンテーション
- 相談窓口の周知
といった部分には、制度を超えて共通する考え方も残っているように感じます。
育成就労制度は新制度として注目されていますが、今回見てきた法的保護講習のように、技能実習制度から引き継がれている仕組みも少なくありません。
そのため、育成就労制度への対応を考える際には、「何が変わったのか」だけでなく、「何が従来と共通しているのか」を整理しておくことも重要だと思います。
実際の企業運営や外国人受入れの現場では、制度対応だけが業務ではありません。本来の事業活動を行いながら制度への対応も進めていく必要があります。
だからこそ、技能実習制度と共通する部分については従来の運用を活かしつつ、制度変更によって新たに求められる部分に重点を置いて対応していく――そうしたメリハリのある制度理解が、実務上は重要になるのではないでしょうか。
育成就労制度を学ぶ際には、変更点ばかりに目を向けるのではなく、技能実習制度との連続性という視点から見てみることも、有効なのかもしれません。
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