育成就労制度の転籍ルールを整理する|転籍制限期間は1年?2年?転籍後の期間はどうなる?

育成就労制度では、技能実習制度と異なり、一定の要件を満たした場合に本人意向による転籍が認められます。

そのため、

「いつから転籍できるのか」

「転籍したら育成就労期間はどうなるのか」

「業務区分を変えれば新たに3年間働けるのか」

といった点は、受入れ企業や監理支援機関、行政書士にとって重要な論点となります。

そこで今回は、育成就労制度における転籍制限期間と育成就労期間の取扱いについて整理してみます。

目次

転籍制限期間は分野ごとに異なる

育成就労制度では、本人意向による転籍が認められる一方で、一定期間は転籍を制限する仕組みが設けられています。

もっとも、その期間は全ての分野で一律ではありません。

現在公表されている「育成就労制度における本人意向による転籍の制限(案)」では、介護、建設、工業製品製造業、飲食料品製造業、外食業などについては、転籍制限期間を2年とする方向性が示されています。

一方で、農業、漁業、宿泊、ビルクリーニングなどの分野については、転籍制限期間を1年とする案が示されています。

これは各分野における技能習得期間や人材流出リスクなどを考慮した結果であると考えられます。

【分野ごとの転籍制限期間一覧】

1年を超える転籍制限が認められている分野1年を超える転籍制限が認められていない分野
介護ビルクリーニング
工業製品製造業リネンサプライ
建設宿泊
造船・舶用工業鉄道
自動車整備物流倉庫
飲食料品製造業農業
外食業漁業
資源循環林業
木材産業

参考資料:育成就労制度における本人意向による転籍の制限(案)について

※ 「1年を超える転籍制限が認められている分野」については、分野別運用方針において2年間の転籍制限期間が設定される方向性が示されています。ただし、育成就労実施者が作成する育成就労計画において1年と定めることも可能です。

※ 「1年を超える転籍制限が認められていない分野」については、本人意向による転籍の制限期間は1年となります。

外食業でも転籍制限期間を1年に短縮できる

ここで注目したいのは、分野別運用方針で2年間の転籍制限が予定されている分野であっても、全ての企業が一律に2年間の転籍制限を設ける必要はないという点です。

育成就労制度のQ&Aでは、育成就労実施者が作成する育成就労計画において、転籍制限期間を1年と定めることができるとされています。

つまり外食業であっても、

・転籍制限期間を2年とする企業

・転籍制限期間を1年とする企業

の両方が存在することになります。

企業は「転籍防止」と「待遇改善」のどちらを重視するか

転籍制限期間を2年とする場合、企業は本人意向による転籍を2年間制限することができます。

しかし、その代わりとして、1年経過後に昇給その他の待遇向上措置を講じることが求められます。

一方で、転籍制限期間を1年とする場合は、外国人本人が1年経過後に転籍できるようになりますが、2年制限を選択した場合に求められる待遇向上措置は不要となります。

つまり企業は、

・人材流出を防ぐために2年間の転籍制限を設け、その代わりに処遇改善を行う

または

・1年後の転籍を認める代わりに、追加的な待遇向上義務を負わない

という選択を行うことになります。

労働条件明示にも影響する

育成就労制度では、設定した転籍制限期間について、労働条件等の明示事項として外国人本人へ説明する必要があります。

さらに、転籍制限期間を1年超とする場合には、1年経過後に実施する昇給や待遇改善の内容についても併せて明示することが求められています。

そのため、受入れ企業は単に「2年間転籍できません」と定めるだけでは足りません。

その見返りとして、どのような待遇改善を行うのかについても事前に検討しておく必要があります。

転籍しても育成就労期間はリセットされない

育成就労制度では転籍が認められていますが、転籍したからといって育成就労期間が最初からやり直しになるわけではありません。

育成就労外国人が転籍した場合でも、育成就労期間は原則として通算されます。

例えば、転籍前の受入れ企業で2年間育成就労を行っていた場合、転籍先で育成就労できる期間は残り1年となります。

そのため、

「2年間働いて転籍し、さらに3年間育成就労を続ける」

といったことは認められていません。

業務区分を変えれば何度でも育成就労できるわけではない

ここで実務上気になるのが、

「業務区分を変更すれば新たに3年間の育成就労が可能になるのではないか」

という点です。

例えば、

・介護から外食業へ

・飲食料品製造業から外食業へ

・建設から製造業へ

といったケースです。

しかし、育成就労制度は、業務区分を変更すれば何度でも3年間の育成就労ができる制度として設計されているわけではありません。

通常の転籍は同一業務区分内で行うことが前提とされています。

また、異なる業務区分で改めて育成就労を行う場合についても、

・業務とのミスマッチ

・負傷や疾病

・その他やむを得ない事情

などが存在することに加え、

・いったん出国していること

・過去の育成就労期間の合計が2年以内であること

などの要件が設けられています。

制度開始後は企業ごとの差別化要因になる可能性も

技能実習制度では、転籍は極めて限定的でした。

しかし育成就労制度では、転籍そのものを前提とした制度設計が採用されています。

そのため今後は、

「転籍制限期間を1年としている企業」

「転籍制限期間は2年だが、1年後に昇給制度を設けている企業」

など、企業ごとの受入れ方針が外国人材の採用に影響を与える可能性があります。

特に外食業や介護分野のように人材流動性の高い分野では、転籍制限期間の設定や待遇向上策の内容が、採用競争力を左右する要素になるかもしれません。

育成就労制度は「転籍できる制度」へ変わるだけではありません。

受入れ企業側も、どのような条件で外国人材を受け入れるのかを戦略的に考える時代へ移行していくことになりそうです。

まとめ

育成就労制度の転籍制度を詳しく見ていくと、単に外国人の転職の自由を拡大する制度ではないことが分かります。

転籍制限期間を分野ごとに分けるだけでなく、企業に一定の選択権を与えることで、人材育成を重視する企業と人材流動性を重視する企業の双方に配慮した制度設計となっています。

技能実習制度では画一的な運用が行われていましたが、育成就労制度では企業ごとの経営方針や人材戦略を反映できる余地が広がっている印象を強く受けます。

外国人材の保護と企業側の人材育成投資の回収。

その両立を目指して制度設計が行われていることが、この「転籍制度」を調べて垣間見えたような気がします。


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