日本とイタリアは似ている。しかし、お酒の売り方はまったく違う
日本とイタリアは、一見するとかなり似ている国だと思います。
私は20代後半の頃、イタリア・フィレンツェにあるアカデミアリアチという料理学校で基礎を学び、
その後、現地のレストランでインターンとして修行をしていました。
その過程で、フィレンツェを拠点にイタリア各地を回り、食文化や地域性について学ぶ機会がありました。
その中で強く感じたのが、日本とイタリアの地理的・文化的な共通点です。
イタリアは山が多く、盆地のような地形が各地に広がっています。これは日本ともよく似ています。
また、イタリアは北部こそ陸続きですが、それ以外の三方は海に囲まれており、全体として島国に近い性質を持っています。
さらに、歴史的にも小さな国や都市国家が点在していた点も、日本の旧来の藩制度と重なる部分があります。
このように、日本とイタリアは地理的にも歴史的にも共通点が多い国です。
しかし、ひとつ大きく異なる点があります。
それが、「お酒の売り方」です。
イタリアは“地域”、日本は“個人”でブランドを作っている
イタリアのワインは、フランチャコルタやバローロのように“地域単位”でブランドが確立されています。
その背景には、DOCGやDOCといった制度があります。これは簡単に言えば、
「特定の地域・製法・基準を満たしたものだけが、その名称を名乗れる」という仕組みです。
つまり、ワインは地域全体で守られているのです。
一方で、日本酒はどうでしょうか。
日本酒にも「灘」や「伏見」といった有名な産地はありますが、実際にブランドとして認識されているのは
「獺祭」のような個別銘柄であることが多いのが現状です。
この違いを整理すると、次のようになります。
イタリアは「地域」で売り、日本は「個」で売る。
なぜこの違いが生まれたのか
この違いは単なる文化の差ではなく、歴史的・地理的な背景によるものです。
特に大きいのが、「外との関係」です。
イタリアはユーラシア大陸の一部に位置しており、古くから他国との往来が盛んな地域でした。
人や物が行き交う中で、模倣品や品質のばらつきといった問題も自然と発生します。
そのような環境では、個々の生産者だけで品質やブランドを守ることは困難です。
そのため、地域単位でルールを定め、「フランチャコルタとは何か」といった定義を明確にし、
ブランドを守る必要がありました。
一方で、日本は島国であり、長い間鎖国政策を取っていました。
その結果、市場はほぼ国内で完結しており、外部からの模倣品に対する対策を強く意識する必要がありませんでした。
つまり、
・イタリアは外との競争が前提の社会
・日本は国内完結型の市場
この違いが、
・イタリアは“地域で守る構造”
・ 日本は“個で成立する構造”
を生み出したと言えます。
どちらのやり方が優れているのか
では、イタリアのような地域ブランドの方が優れているのでしょうか。
結論から言えば、単純に優劣で語れるものではありません。
イタリアのやり方は、非常に合理的であり、特にグローバル市場においては強みを発揮します。
現代の市場では、
- 資金力
- 営業力
- ブランド認知
といった要素が重要になります。
その中で、個人や一企業が単独で世界と戦うのは簡単ではありません。
その点、地域単位でブランドを形成するイタリアのやり方は、非常に理にかなっていると言えます。
一方で、日本のやり方にも明確な強みがある
ただし、日本のやり方にも大きな強みがあります。
それが、「個の力を最大限に伸ばせる」という点です。
各酒蔵が独自の技術や思想を磨き、それぞれが個別にブランドを築いていく。
この環境は、非常に高いレベルの製品を生み出す土壌になります。
整理すると、
・イタリアは「仕組みでブランドを守る」
・ 日本は「個の力でブランドを作る」
という違いがあると言えます。
今、日本酒が直面している課題
現在、日本酒は海外市場でも注目を集めています。
しかしその一方で、「ブランドとしての分かりにくさ」という課題も存在します。
ワインであれば、地域名である程度の品質や特徴が共有されますが、
日本酒は銘柄ごとの理解が必要になります。
これは言い換えれば、
日本酒は“個人戦のまま世界に出ている状態”とも言えるでしょう。
最後に
イタリアのように地域でブランドを形成する方法は、確かに強力な戦略です。
しかし、それが唯一の正解というわけではありません。
日本のように、個の力でブランドを築くやり方にも大きな価値があります。
ただし、グローバル市場においては、個人単位で戦う場合、
資金力や営業力といった面でハードルが高くなるのも事実です。
・ 地域で戦うか
・ 個で戦うか
それぞれに明確なメリットとデメリットがあります。
今後、日本酒がどのような方向に進んでいくのか。
その点は、非常に興味深いテーマの一つと言えるでしょう。
なお、酒類を取り扱う際のルールや仕組みについては、別の記事でも整理しています。
気になる方は、あわせてご覧ください。
※酒類販売に関する記事一覧「なべ行政書士事務所」
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