【運用要領対応】育成就労制度の本人意向転籍まとめ|受入要件・人数制限・初期費用補填制度を解説

育成就労制度では、一定の要件を満たした場合、本人の意思による転籍(本人意向転籍)が認められています。これは原則として転籍が認められていなかった技能実習制度からの大きな変更点の一つです。

もっとも、転籍が認められたとはいえ、特定技能制度のように自由に転職できるわけではありません。運用要領では制度の適正な運用を維持するため、転籍先の受入要件や受入人数、転籍元企業への受入費用の補填など、さまざまなルールが定められています。

今回は、運用要領に基づき、本人意向転籍における転籍先の受入要件、人数制限、受入費用補填制度について、実務上押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

目次

転籍先企業の受入要件|育成就労実施者でなければ転籍できない

まず押さえておきたいのが、本人意向による転籍であっても、転籍先の企業は育成就労実施者として新たな育成就労計画の認定を受ける必要があるという点です。

そのため、育成就労外国人は一般企業へ自由に転職できるわけではなく、育成就労制度の枠組みの中で転籍することが前提となっています。これは、転籍後も継続して人材育成を行うことが制度の目的とされているためです。

例えば、特定技能外国人を受け入れている企業であっても、育成就労制度の受入れを実施していない企業であれば、育成就労外国人の転籍先となることはできません。

つまり、「将来的には特定技能として雇用したい」という考えがあったとしても、育成就労の段階から受け入れるためには、育成就労制度で定められた要件を満たした上で、自らも育成就労実施者として受入れを行っている必要があります。

制度としては特定技能制度との接続が意識されているものの、育成就労と特定技能はあくまで別制度です。そのため、特定技能外国人を受け入れているという理由だけで、育成就労外国人の転籍先になれるわけではない点には注意が必要です。

本人意向転籍者の受入人数にも上限がある

さらに、転籍先企業が受け入れることができる本人意向転籍者の人数にも制限があります。

原則として、本人意向による転籍者は、その企業で受け入れている育成就労外国人全体の3分の1以内でなければなりません。

また、都市部への人材集中を防ぐため、地方圏から都市圏への本人意向転籍については、さらに6分の1以内という追加の制限も設けられています。

【本人意向転籍による受入人数上限の表】

これらの規定からも、制度として転籍を認めながらも、人材の偏在や転籍だけを目的とした受入れを防止しようとする考え方が読み取れます。

民間職業紹介事業者は転籍に関与できない

運用要領では、本人意向による転籍に民間の職業紹介事業者を関与させないことも明確にされています。

背景には、転籍をビジネス化する悪質なブローカーの介入を防止する目的があるものと考えられます。

育成就労制度では転籍が認められる一方で、その転籍が不適切な仲介によって行われることは制度趣旨に反すると考えられているためです。

転籍先企業は転籍元企業へ初期費用を補填する必要がある

育成就労外国人を受け入れる企業は、日本語教育や技能習得、受入準備など、受入れに当たってさまざまな初期費用を負担しています。

そのため、本人意向により他社へ転籍した場合には、転籍先企業は転籍元企業が負担した初期費用の一部を補填しなければなりません。

補填額は転籍した時期によって異なり、育成期間が短いうちに転籍するほど補填割合は高く、育成期間が長くなるにつれて補填割合は小さくなる仕組みとなっています。

また、転籍先企業は、新たな育成就労計画の認定申請を行う際に、算定された補填額を転籍元企業へ支払うことを誓約する必要があります。

実務上は、転籍元企業と事前に調整ができる場合には、補填額について双方で認識を一致させておくことが望ましいとされています。

なお、誓約したにもかかわらず補填金を支払わなかった場合は、虚偽の申請を行ったものとして育成就労計画の認定が取り消される可能性があります。

さらに、本人意向転籍者を受け入れた企業は、育成就労計画の認定を受けた日から6か月以内に、補填金を支払ったことを証明する書類を外国人育成就労機構へ提出しなければなりません。

上記の表からも分かる通り、転籍元企業での育成期間が長くなるほど、転籍先企業が負担する補填額は少なくなる仕組みとなっています。

なお、本人意向による転籍が2回目となる場合は、1回目とは異なる按分率で補填額が算定されます。2回目の転籍では補填額の算定方法は下記の表のとおりとなります。

(例)育成就労実施者 Aから育成就労実施者 B に1回目の本人意向の転籍を行い、その後、育成就労実施者 B から育成就労実施者 C に本人意向の転籍をしようとする場合

制度全体から見えてくるもの

ここまで転籍制度を見ていくと、育成就労制度は「転籍を自由化した制度」というよりも、転籍を認めながら制度全体のバランスを維持するための制度として設計されていることが分かります。

  • 転籍先も育成就労実施者であること
  • 本人意向転籍者の人数制限
  • 都市部への人材流出防止
  • 民間職業紹介事業者の関与禁止
  • 初期費用の補填制度

これらの規定は、転籍制度を導入する一方で、人材の引き抜きやブローカーの介入、企業の育成意欲の低下といった課題を防止するための仕組みであると考えられます。

育成就労制度は、技能実習制度よりも転籍の自由度を高めていますが、特定技能制度のような自由な転職制度とも異なります。制度全体を見渡すと、「人材育成」と「労働者保護」、そして「受入企業の負担軽減」のバランスを取ろうとする制度設計が随所に見られ、今後実務を行う上でもこれらの規定を正確に理解しておくことが重要になるでしょう。


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