本記事では、育成就労制度で新たに設けられた「受入人数枠の例外規定」について解説します。
育成就労制度には受入人数の上限が設けられていますが、一定の場合にはその人数枠の計算から除外される育成就労外国人が存在します。
特に、育成就労制度で新たに認められた転籍制度とも関係する部分であり、技能実習制度との違いが見えるポイントの一つでもあります。
育成就労制度には受入人数枠がある
まず、育成就労制度では受入企業(育成就労実施者)の規模に応じて、受け入れることができる育成就労外国人の人数に上限が設けられています。
例えば、常勤職員数が1人の企業であれば3人まで、201人以上300人以下の企業であれば45人までといった形で受入人数枠が定められています。
受入人数枠について詳しく知りたい方は、こちらの記事「育成就労制度とは?運用要領を読んで感じた実務上のポイントも解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
実は受入人数枠には例外規定がある
もっとも、この受入人数枠は絶対的なものではありません。
育成就労制度では、一定の要件を満たした育成就労外国人については、受入人数枠の計算から除外される例外規定が設けられています。
では、どのようなケースが例外規定の対象となるのでしょうか。
まずは全体像を見てみましょう。
育成就労制度の人数枠の例外となる主なケース
| ケース | 具体例 |
|---|---|
| ・やむを得ない事情による転籍 | 倒産、法令違反、暴行・脅迫、人権侵害など |
| ・妊娠・出産等による中断後の再開 | 産休・育休等により育成就労を中断していた場合 |
| ・認定取消し等による受入先変更 | 受入企業側の問題により育成就労を継続できなくなった場合 |
| ・育成就労期間の延長 | 制度上認められた延長期間中の育成就労外国人 |
| ・優良認定の喪失等による転籍 | 受入企業が優良要件を満たさなくなった場合 |
| ・常勤職員数の減少による超過 | 人数枠が縮小した結果、既存の育成就労外国人が枠を超過した場合 |
これらに該当する育成就労外国人については、受入人数枠の計算から除外される例外規定が設けられています。
それでは、実務上特に重要と思われるケースについて見ていきましょう。
やむを得ない事情により転籍した育成就労外国人
最も注目されるのが、やむを得ない事情により転籍した育成就労外国人です。
育成就労制度では、受入企業側に問題がある場合、育成就労外国人を保護する観点から転籍が認められています。
例えば、次のようなケースです。
- 受入企業の事情により育成就労の継続が困難になった場合
- 雇用契約上の重要な事項について受入企業に重大な違反があった場合
- 暴行、脅迫、自由の制限など人権侵害行為があった場合
- 入管法や労働関係法令に関する不法又は著しく不当な行為があった場合
- その他、育成就労の継続が相当でない事情が認められる場合
技能実習制度では転籍そのものが限定的でしたが、育成就労制度では転籍が制度として組み込まれています。
そのため、このような転籍者について人数枠の例外規定が設けられている点は、育成就労制度の特徴の一つといえるでしょう。
育成就労期間が延長された育成就労外国人
育成就労制度は原則として3年間を想定しています。
しかし、一定の場合には育成就労期間の延長が認められています。
こうした延長期間中の育成就労外国人についても、受入人数枠の例外として取り扱われます。
具体的には、次のようなケースです。
- 育成就労計画に基づいて適正に育成就労を行っていたにもかかわらず、目標として定められた試験に合格できなかった場合
- 傷病や天災などのやむを得ない事情により、育成就労期間内に必要な試験を受験できなかった場合
なお、育成就労期間の延長は無制限に認められるものではなく、延長できる期間は最大1年とされています。
優良認定の喪失等による転籍、常勤職員数の減少による超過
ここは少し分かりにくい部分ですが、育成就労制度の考え方がよく表れている規定です。
育成就労制度では、優良な育成就労実施者として認定された企業については、通常より多くの育成就労外国人を受け入れることができます。
しかし、その後に優良認定の要件を満たさなくなった場合や、常勤職員数の減少によって受入人数枠が縮小した場合には、既に受け入れている育成就労外国人の人数が上限を超えてしまうことがあります。
このような場合、人数枠を超過した育成就労外国人を他の企業が受け入れる際には、受入人数枠の例外として取り扱われます。
さらに興味深いのは、既に受け入れている育成就労外国人本人が、引き続きその企業での就労を希望している場合です。
この場合には、人数枠を超過していたとしても例外的な取扱いが認められています。
例えば、A社が優良認定を受けていたため7人の育成就労外国人を受け入れていたとします。
しかし、その後優良認定の要件を満たさなくなり、本来の受入人数枠が5人に縮小された場合、単純に考えれば2人は転籍しなければならないようにも思えます。
ところが、既に受け入れている育成就労外国人本人が引き続きA社での就労を希望している場合には、例外的な取扱いが認められる可能性があります。
常勤職員数の減少によって人数枠を超過した場合も同様です。
つまり、企業側の事情によって受入人数枠が縮小された場合であっても、それだけを理由として育成就労外国人が直ちに転籍しなければならないわけではありません。
育成就労制度では、育成就労外国人本人の意思も考慮しながら例外的な取扱いが認められているのです。
まとめ
育成就労制度では受入人数枠が設けられていますが、一定の場合には例外規定が認められています。
特に印象的だったのは、単純に人数制限を機械的に適用するのではなく、育成就労外国人本人の事情や意思を考慮した規定が数多く設けられている点です。
例えば、受入企業の法令違反や人権侵害によって転籍を余儀なくされた育成就労外国人については、受入人数枠の例外として取り扱われています。また、優良認定の喪失や常勤職員数の減少によって受入人数枠を超過してしまった場合であっても、育成就労外国人本人が引き続き同じ企業での就労を希望している場合には、例外的な取扱いが認められています。
今回、運用要領や関係法令を読んでいて感じたのは、従来の技能実習制度と比べて、育成就労外国人の保護や意思の尊重がより重視されているということです。
育成就労制度は2027年から本格的にスタートします。実際の運用が始まれば、今回紹介した例外規定についても様々な事例や解釈が蓄積されていくでしょう。
今後も運用要領を読み進めながら、実務上気になったポイントについて引き続き記事にしていきたいと思います。
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