はじめに
近年、日本の介護現場では外国人材の受け入れが広がっています。
技能実習、特定技能、在留資格「介護」など、さまざまな在留資格を通じて、日本の介護施設で働く外国人の方が増えてきました。
その中でも、最近はインドネシア人材への注目が高まっているように感じます。
一方で、外国人材の受け入れが広がる中で、受入企業側が見落としやすいリスクもあります。
その一つが、SNS投稿のリスクです。
今回は、日本で長く介護職として働いていたインドネシア人の知人から聞いた話をもとに、外国人介護人材とSNS投稿リスクについて考えてみたいと思います。
日本人管理者には見えにくいSNS空間がある
この話は私のインドネシア人の知人が話していた実際に現場で起きている話です。
その知人はもともと介護の仕事で来日し、日本の介護施設で長く働いていました。
在留資格「介護」も取得し、同じ介護施設で10年以上勤務しており、同僚や先輩からの話では、勤務態度も非常に真面目で、施設からも信頼されていたようです。現在は介護職を離れ、自分でアジア食材店を経営していますが、今でも以前の介護施設から「戻ってきてほしい」と連絡があるほど、職場との関係は続いているそうです。
そのような方から、最近のインドネシア人介護人材のSNS投稿について、少し気になる話を聞きました。
例えば、介護施設の制服を着たまま、施設内でダンス動画を撮影してTikTokに投稿する。
勤務中と思われる時間帯に、施設内で動画を撮影する。
さらに、利用者である高齢者の方の顔が映り込んだ状態で、頭を撫でたり、茶化すような行為を動画にして投稿しているケースもあるようです。
もちろん、すべてのインドネシア人介護人材がそのようなことをしているわけではありません。
むしろ、多くの方は真面目に働いているはずです。
しかし、一部の投稿であっても、介護施設にとっては大きなリスクになります。
なぜ日本人管理者が気づきにくいのか
問題は、こうした投稿が日本人管理者の目に入りにくいことです。
投稿内容はインドネシア語で書かれていることが多く、日本人の上司や施設管理者が通常の検索で見つけることは簡単ではありません。
また、本人たちも上司が見ていないところで撮影している可能性があります。
つまり、施設側は「何も起きていない」と思っていても、実際には外国人コミュニティの中で動画が広がっている可能性があるということです。
これは、外国人だから特別に問題があるという話ではありません。
日本人でも、飲食店や職場で不適切な動画を撮影し、SNSで炎上する事例はあります。
ただ、外国人材の場合は、母国語のSNS空間で投稿されるため、受入企業側が把握しにくいという特徴があります。
ここが大きな盲点だと思います。
介護施設では特にリスクが大きい
SNS投稿のリスクは、どの職場にもあります。
しかし、介護施設では特に注意が必要です。
なぜなら、介護施設は利用者の生活の場でもあるからです。
利用者の顔、身体状況、生活空間、会話、施設名、制服、名札などが映り込めば、個人情報やプライバシーの問題につながります。
たとえ本人に悪気がなかったとしても、利用者や家族から見れば大きな問題になります。
また、動画の中で利用者を茶化すような行為があれば、介護施設全体の信頼にも関わります。
介護の仕事は、利用者との信頼関係の上に成り立つ仕事です。
そのため、施設内での撮影や投稿については、受入企業側がかなり慎重に管理する必要があります。
一人の行動が国全体の印象に影響することもある
今回話を聞いたインドネシア人の知人は、こうした投稿に対して強い危機感を持っていました。
その理由は、一部の人の行動によって、インドネシア人全体の印象が悪く見られてしまう可能性があるからです。
これは、私自身、海外で生活していた経験があるので分かるのですが、外国で長く暮らしていると、自分は一人の個人であると同時に、「日本人という外国人」として見られていることを実感する場面があります。
一人の日本人の行動が、日本人全体の印象に影響してしまうこともある。これは、旅行や短期滞在だけではなかなか分かりにくい感覚かもしれません。
外国で生活していると、自分はその国では「外国人」です。
例えば、海外で一人の日本人が大きな問題を起こすと、「日本人はこういうことをするのか」と見られてしまうことがあります。
もちろん、本当は一人の行動と国籍全体は別の問題です。
しかし、現実には一部の行動が、その国の人全体の印象に影響してしまうことがあるのです。
逆に、真面目に働き、信頼される人が増えれば、その国の人たち全体への評価も上がります。
だからこそ、真面目に働いてきた外国人ほど、同じ国の人による軽率な行動に強い危機感を持つのだと思います。
受入企業側に必要な対応
この問題は、外国人本人だけの問題ではありません。
受入企業側にも、あらかじめ説明しておく責任があると思います。
特に重要なのは、日本語だけで説明しないことです。
日本語の就業規則に「SNS投稿禁止」と書いてあっても、本人が正確に理解していなければ意味がありません。
少なくとも、次のような内容は母国語でも説明しておくべきです。
・勤務中に動画を撮影してはいけないこと
・施設内を無断で撮影してはいけないこと
・利用者の顔や身体、生活空間をSNSに投稿してはいけないこと
・制服、名札、施設名が映る投稿にもリスクがあること
・休憩中であっても、施設内での撮影には注意が必要であること
・投稿が原因で利用者、家族、施設に迷惑がかかる可能性があること
・悪気がなくても、懲戒や契約上の問題につながる場合があること
単に「ダメ」と言うだけではなく、なぜダメなのかを説明することが重要です。
特に介護施設では、利用者の尊厳やプライバシーを守ることが仕事の一部です。
その感覚を、入社時や受け入れ時に丁寧に伝える必要があります。
SNSルールは外国人材受け入れの一部として考えるべき
外国人材の受け入れというと、在留資格、雇用契約、支援計画、日本語教育、生活支援などに目が向きがちです。
もちろん、それらは非常に重要です。
しかし、これからはSNS利用に関する教育も、外国人材受け入れの一部として考える必要があると思います。
特に若い世代にとって、TikTokやInstagramなどのSNSは日常的なものです。
本人たちにとっては、軽い気持ちで撮影した動画や画像かもしれません。
しかし、介護施設という職場では、その軽い投稿が大きな問題につながる可能性があります。
受入企業側は、「日本人上司が見ていないSNS空間がある」という前提で、リスク管理を考える必要があります。
おわりに
今回の話は、インドネシア人介護人材だけを問題視するものではありません。
日本人でも、外国人でも、SNS投稿によるトラブルは起こり得ます。
ただ、外国人材の場合は、母国語で投稿されることが多く、日本人管理者が把握しにくいという特徴があります。
そのため、受入企業側は、SNS利用に関するルールを日本語だけでなく、母国語でも説明することが重要です。
外国人材が増えること自体は、日本の介護現場にとって大きな力になります。
だからこそ、真面目に働く外国人材が正当に評価されるためにも、一部の軽率な投稿によって全体の印象が悪くならないよう、受入企業側も事前の教育とリスク管理を整えておく必要があるのではないでしょうか。
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